さらに言えば、世界に唯一無二の記録を世界一と認定することがあれば、それも問題だと思います。ま、目くじらを立てるほどのことではありませんが・・・。ギネス世界記録への登録申請は、年間6万件を超えるといいます。申請は基本的に無料ですが、有料の優先サービスもあり、料金は7万円とのことです。また、結果はギネス・ブックとして世界中で出版されるわけですから、往復でお金を稼ぐうまい商売です。ギネス世界記録は、公序良俗に反しないことを旨とするポリシーのもと、種々の厳格な基準に基づき、透明度の高い認定がなされているようです。興味深いことに、記録が更新される可能性が存在することも、条件の一つになっています。唯一無二の記録である可能性を排除する要件なのでしょう。
世界一大きなピザといった食品に関する記録挑戦をよく見かけますが、挑戦に際して作られた食品は、すべて消費されることも条件の一つになっています。他にも、不法行為、環境破壊、年齢・性別・人種等の関する人権侵害、健康への悪影響等々も考慮されているようです。また、記録のためだけの無意味な挑戦、あるいは数的な判定の正確性に問題がある場合も対象外とされるようです。マリリン・ボス・サバントのIQ228という世界記録は、かつて認定記録でしたが、後に取り消されています。高いIQの測定が困難であること、最高IQの認定自体に意味がないことを理由に取り消されました。恐らくIQそのものの有用性に対する社会的批判が起こったことが真の理由だったのでしょう。
いずれにしても、このような商売では、権威の維持こそが生命線ですから、ギネスの厳格な運営方針は当然のことだと思います。ただ、そのなかで、やはり気になるのが、比較対象が複数の国に存在するのか、という問題です。申請時点で、記録が一つの国や地域に限定されるもの、あるいは特殊に過ぎるものは却下されるとのことです。ただ、例外も存在するようで、ポリシーが厳密に運用されているとは言い難いようです。日本固有と思われる盆踊りも大いに疑問です。例えば、宗教的背景を持ち、古くから毎年行われてきた群舞、とでもすれば、世界的に存在するかも知れません。ただ、盆踊りに関しては「最多人数で”盆踊り”を踊る」と定義されており、明らかに日本に限った話のように思えます。
もっとも、米国や南米の日系人社会の一部でも盆踊りは踊られていると聞きますので、世界的な競争が可能という理屈が成り立つのかも知れません。とは言え、ギネス記録も含めてランキング好きの日本ということを考えれば、微妙に商売の匂いも感じます。そう言えば、最長の巻き寿司という記録もあり、熊本県の高校が持っているようです。これも同類かと思いました。ただ、熊本の高校が破った前の記録はロシアで樹立されたものだったと聞き、驚きました。ギネスの世界記録というビジネスは、どこか格付会社を思い起こさせます。世界の三大格付会社と言われるスタンダード&プアーズ、ムーディズ、フィッチは、いずれも100年を超す歴史を持ち、金融の世界では絶大な信頼を得ています。人のふんどしで相撲を取ると言えば言い過ぎかもしれませんが、実にうまい商売を考えたものだと感心します。(写真出典:kadokawa.co.jp)