2023年8月14日月曜日

ポロ・シャツ

カジュアル・ウェアの王道だったポロ・シャツは、1980年代以降、Tシャツに押されっぱなしだったようです。ところが、近年、また復活しつつあるとのこと。恐らく、2011年に始まったスーパー・クール・ビズの影響だと思われます。クール・ビズ自体は、2005年、小池百合子環境大臣の提唱によって始まりました。ただ、ビジネス界のとまどいは大きく、すぐには定着しませんでした。その頃、人事部長に就任した私は積極的にクールビズを進め、まずは社長・会長にネクタイを外すようお願いしました。抵抗されましたが、ことは環境問題に対する姿勢の問題である、と強弁し、外してもらいました。金曜は、カジュアル・デーと定め、私は率先してビジネス・カジュアルに徹しました。

当時、京都のさる銀行も、なかなかネクタイを外しませんでした。西陣のネクタイ産業を顧客とする身としては当然とも言えました。さはさりながら、そろそろ外したら如何かと言ったところ、顧客がまだネクタイをしているから外せない、と言われました。それを銀行の顧客に話すと、銀行がネクタイを外さないから、わしらも外せない、と言っていました。役所と銀行がネクタイを外したことで、クールビズは一気に進んだように思います。実に日本的な話だと言えます。2011年の東日本大震災の際には深刻な電力不足が起こり、会社の室温設定を上げるともに、スーパー・クール・ビズが推奨されます。ここで、チノパン、スニーカー、そしてポロ・シャツも、ビジネス・カジュアルとして認められることになりました。

ポロ・シャツは、ポロ競技で着用していたからポロ・シャツと呼ばれるのだろうと思っていました。ところが、あるとき、ポロ・シャツを発明したのはラコステだという記事を読みました。ラコステは、1933年、元プロ・テニス・プレイヤーだったルネ・ラコステによって創業されたフランスのアパレル・ブランドです。ラコステがテニス・ウェアとして開発したのであれば、なぜテニス・シャツと呼ばれないのか疑問です。実際、テニス・シャツと呼ばれていたこともあったようです。調べてみると、ポロ・シャツの起源、由来には、やや複雑な経緯がありました。そもそもポロ・シャツの原型は、19世紀半ば、インドのポロ競技で生まれ、後に英国でも着られるようになったようです。

生地は厚手のオックスフォードで、風ではためくことを避けるために襟はボタンダウンになっていたようです。ちなみに、ボタン・ダウンは、ブルックス・ブルザースによる発明です。その後、生地にはジャージー生地が使われるようになります。ジャージー生地は、17世紀、イギリスのジャージー島で、漁師のシャツとして誕生しました。いわゆる織物ではなく、編物、つまり伸縮性に優れたニットです。ジャージーのポロ・ウェアに着目したのが、ルネ・ラコステでした。グランド・スラムで7度優勝したラコステでしたが、当時の硬いテニス・ウェアを不快に思っており、綿のジャージー生地、平たい襟、後ろの裾が長いシャツを開発します。現在に至るポロ・シャツの誕生です。

ちなみに、ラコステのロゴ・マークであるワニは、ルネ・ラコステのニック・ネームに由来します。食らいついたら放さないというプレイ・スタイルから付いたニック・ネームだそうです。さて、誕生の経緯はともかくとして、ポロ・シャツと呼ばれることになった経緯は判然としません。少なくとも、ポロ・シャツという名称を広めたのはラルフ・ローレンだったとされます。ラルフ・ローレンの「ポロ」というブランドは、1968年に誕生しています。ラルフ・ローレンは、1972年、コットン・メッシュの生地、多彩な色、ポロ選手のロゴをあしらった”ポロ・シャツ”を主力商品として発売します。これが、プレッピー・スタイルの典型的なカジュアル・ウェアとして大ヒットすることになりました。テニス、ゴルフ、カジュアル・ウェアとして一般化していたニット・シャツは、これ以降、ポロ・シャツとして知られるようになったわけです。(写真出典:ralphlauren.co.jp)

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