2023年6月29日木曜日

ハレイワ

ハワイへ行った際には、よくノース・ショアへドライブしました。サンセット・ビーチをはじめノース・ショアは、冬にビッグ・ウェーブが押し寄せるサーフィンのメッカとして知られます。私のお気に入りはワイメア渓谷です。渓谷沿いの植物園には、南国の植物が咲き誇り、ハワイへ来たことを実感させてくれます。奥まったところにあるワイメアの滝では、ダイビング・ショーも行われます。サンセット・ビーチやワイメア渓谷の手前にハレイワの町があります。ハレイワ名物と言えば、なんと言ってもマツモト・シェイブ・アイスということになります。ただのかき氷にカラフルなシロップがかかっているだけです。日本人にとっては、珍しくもありませんが、アイスクリームが国民食のアメリカでは、もの珍しかったのでしょう。

マツモト・シェイブ・アイス店は、日系移民の多かったハレイワの小さなグローサリー・ストアでした。マツモト・マモルが、タナカ・ストアーを引き継いで店を始めたのが1951年のことでした。かき氷を商ってはどうか、と勧められ、1960年代、日本からかき氷の機械を輸入し、シェイブド・アイスを売り始めます。正しくは、シェイブド・アイスですが、シェイブ・アイスとしたのは、いかにも日系移民らしいところです。シェイブ・アイスは、サーファーたちの間で人気となり、70年代には有名店として行列ができ始めたようです。私が、初めて訪れたのは1990年のことだと記憶します。人が集まってはいましたが、田舎道沿いの寂れた店舗でした。暗い店内には、まだ多少の食品や雑貨も置いてありました。

ハワイ移民の歴史を感じさせる店でしたが、その後、ハワイ名物の一つにまで知名度を上げたマツモト・シェイブ・アイスは、今や立派な店を構えています。同時に、田舎道にも多くの店が増えました。その一つが、1975年、サンドイッチ店として開店した「クア・アイナ」です。クア・アイナとはハワイの言葉で、田舎の土地を意味します。そのハンバーガーは、サーファーの間で人気を高め、1997年には、ホノルルと青山にも出店しています。現在は、ハレイワ本店の他に、英国に2店舗、台湾2店舗、そして日本に30店舗を構えます。ほぼ日本の店です。青山の店は、グルメ・バーガー・ブームに乗って出店されました。日本ではファスト・フードのイメージが強かったハンバーガーですが、アメリカでは、もともとピンキリでした。

例えば、NYにいた頃、家の近くにあったファッド・ラッカーズというバーガー店では、バンズも、肉の量も、そして焼き加減も指定できました。値段は、マックの4~5倍でしたが、美味しいハンバーガーでした。過日、かなり久しぶりにクア・アイナの青山本店に行きました。これが、やはり美味しいわけです。特にパテの塩味や焼き加減の香ばしさが絶品だと思いました。2015年、NYから東京にも出店して大人気となったシェイク・シャックよりも、はるかに美味しいと思います。グルメ・バーガーは、日本にすっかり定着したようです。食べログで、評価3.5以上のバーガー店が、東京だけでも90店に及びます。ちなみに、外苑前のシェイク・シャックの評価は3.48、クア・アイナ青山本店は3.39となっています。

ノース・ショアには、もともとオアフ島最大の祭祀場があり、神聖な土地だったようです。19世紀、白人が入り込むと、サトウキビとパイナップルのプランテーションが作られます。日系人は、その労働力として移民したわけです。19世紀末、プランテーション経営者のベンジャミン・ディリンガムが、産物と労働力輸送のためにホノルルとノース・ショア間に鉄道を敷き、終着駅のハレイワにホテルを建設します。これがハレイワ集落の始まりとなったようです。ハレイワを有名にしたマツモト・シェイブ・アイスとクア・アイナが、ともに日本にゆかりがあることは面白いと思います。ハレは、ハワイの言葉で家、イワは軍艦鳥を意味します。ハレイワと聞くと、私の頭の中では自動的に「晴岩」という漢字が浮かびます。それは、まったく故なきことでも無さそうな気がします。(写真:クア・アイナのハレイワ店 出典:kua-aina.com)

マクア渓谷