2年後くらい、エジプトのルクソールでのことですが、神殿のライト・ショーを見てホテルに戻った際、やたらアイス・コーヒーが飲みたくなりました。氷の心配をすべきところですが、ホテルならミネラル・ウォーターで氷を作っているはずだと思い込み、かつ海外の水には強い方だという自信から、アイス・コーヒーを注文しました。ダメでした。すっかりやられました。翌日は、朝から王家の谷を見学する予定でしたが、とてもそれどころではありません。ツアーに参加していた薬局のご主人からいただいた抗生物質を服用すると、症状はかなり改善し、相当に遅れたものの皆さんに合流することができました。ただ、完全に回復とまではいかなかったので、夕食に予約していた鳩料理の名店はキャンセルせざるを得ませんでした。
以降、海外での水には十分気を付けています。また、しばらくの間、海外旅行には抗生物質を携行していました。それから随分経ちますが、清潔な軟水の水道水に慣れた日本人にとって、いまだ海外の水事情は厳しいままのようです。国交省が2018年に公表したデータに依れば、日本人が水道水を安心して飲める国は、日本を含む9カ国のみとのこと。他は、南アフリカ、アイスランド、アイルランド、ノルウェー、フィンランド、ドイツ、オーストリア、スロベニアとなります。安心できない国の問題点は、硬水の硬度が高い場合もありますが、主に取水源と水道設備によるものだとされます。上水設備が整っていても、老朽化していたり、メンテナンスが不十分な場合も多いようです。
さらに人口が密集する都市などでは、貯水槽が多く活用されています。これがまた大問題なわけです。日本では、法的に、かなり厳しい清掃・点検・水質検査が義務づけられていますが、国によってはルーズなところも多いようです。ちなみに、日本では、水道圧の改善が進み、貯水槽は減っているようです。かつて、東京の水道水は不味く、特に都心部の水は、田舎出身者には耐えがたいものがありました。現在では、東京都の水道水もかなり美味しくなったと思います。都水道局による水質改善プロジェクトの成果ですが、貯水槽が無くなったことも影響しているのでしょう。ちなみに、東京都は、水質改善をPRするために、水道水のペット・ボトル”東京水”を販売していました。販売は、2021年で終了しています。
日本は「安全と水がタダの国」と言われたものです。安全面は、多少変わってきたように思います。水も、タダの水ばかりではありませんが、依然として美味しい水が安価に飲めます。実にありがたいことだと思います。雨が多く、国土の8割が山岳という国ならではことです。余談ですが、日本の豊富な水資源は、水力発電にも利用されてきました。ただ、現在の総発電量に占める水力発電の割合は8%に達しません。日本の特性を活かし、もっと水力発電を増やせばいいのにと思い、専門家に聞いたことがあります。日本の河川は、水量や急峻さという点で、発電向きではないのだそうです。ということは無理して水力発電所を作っても発電効率が悪くなるということになります。なんとも歯がゆい話です。(写真出典:hands.net)