2023年5月20日土曜日

名古屋めし(3)

 【あんかけスパゲッティ】

あんかけスパゲティは、明らかに中毒性があります。あらかじめ茹で置きした2.2ミリの極太麺に、トマト・ベースで胡椒を効かせた和風あんと、至ってシンプルなのですが、やみつきになります。茹で置きの麺は、注文が入るとフライパンに油を入れて戻します。この油の多さが中毒性の源かも知れません。また、このスタイルだと、注文に応じて、麺の量を自在に増やせます。この食べ応え、量的満足感も中毒性の源になっているのでしょう。あんかけスパゲッティを生み出したのは、「スパゲッティハウス ヨコイ」創業者の横井博です。丸栄ホテル(現名古屋国際ホテル)のシェフだった横井は、イタリア料理を普及させるために、デミグラ・ソースとミート・ソースを合わせ、かつ名古屋人好みに仕立てることを目指します。

結果、生まれたあんかけスパゲッティは、1961年、横井が親戚と立ち上げた「そーれ」で出され、人気を博します。2年後には独立して「ヨコイ」を開店させています。あんかけスパゲッティは、麺とあんは皆同じですが具材によってメニューが分かれます。一番人気は、ウインナー・ハム・ベーコン・オニオン・ピーマン・マッシュルームが入った”ミラカン”です。あんかけスパゲッティの王道ミラカンは、ミラノとカントリーという異なるメニューを合体させたものです。色々なメニューを試そうと思うのですが、席に着くと必ず”ミラカン”と言ってしまいます。ミラカンという独特なネーミングにも中毒性があります。名古屋には、あんかけスパゲッティを出す店が多くありますが、不思議なことに、どの店のメニューにもミラカンがあります。

ヨコイのスパゲッティは、基本が230gで、1.2倍、1.5倍、Wと選べます。通常、パスタの一人前は100gですから、基本で既に倍以上となっています。他の店では、さらに大盛りも可能となっています。東京では、有楽町のジャポネ、大手町のリトル小岩井等、いわゆるロメスパ(路面のスパゲティ)が根強い人気を誇ります。ソースこそ違いますが、あんかけスパゲッティと同じ茹で置きの2.2ミリ極太麺というスタイルは同じです。明らかにあんかけスパゲッティにインスパイアされたものなのでしょう。ちなみに、ジャポネのレギュラーは350g、ジャンボ560g、横綱720gですが、メニュー外に、親方900g、理事長1,100gもあります。(写真出典:yoki-ansupa.jp)

【きしめん】

名古屋の人たちに、きしめんの美味い店を教えてくれ、と言うと、多少悩んでから、新幹線のホームと答えます。確かに、名駅構内に展開する「住よし」のきしめんはとても美味しいと思います。基本的には、どの店舗の味も同じだと思いますが、東海道線ホームの住よしが一番うまいと言うマニアックなファンもいます。私も大のきしめんファンなので、一時期、関西出張から帰る際、一旦、名古屋で下車して、ホームで住よしのきしめんを食べてから、再度、新幹線に乗ることをルーティンにしていました。もちろん、市内には、きしめんを出す店も多くありますが、ほとんどは他のメニューも出す一般的な食堂です。きしめん専門店が少ないので、美味い店を聞かれた名古屋の人たちは、回答に困るのかも知れません。

平打ちのうどん自体は、名古屋独特のものではなく、各地にもあります。江戸期には、三河の芋川の名物とされていたようです。桐生名物の”ひもかわうどん”は、芋川がなまって”ひもかわ”になったと言われます。きしめんらしさは、鰹節の効いた出汁、上に乗せる花かつおだと思います。ある意味、とても贅沢な出汁であり、名古屋の底力も感じさせます。夏になると、冷やしたきしめんも食べられますが、名古屋ではこれを”ころ”と呼びます。ころは、香露とも書き、麺のつゆから来ているという説があります。ただ、他の説もあり、はっきりしていません。ころきしめんは、鰹だしが効いているだけに、なかなかの美味です。夏場、名古屋ゴルフ倶楽部和合コースのハーフウェイ・ハウスでよく食べました。汗をかいた後のころきしめんは、格段のうまさでした。(写真出典:maff.go.jp)

(つづく)

マクア渓谷