2022年11月26日土曜日

EV

テスラ・ロードスター
2009年、リチウムイオン二次電池を搭載した世界初の量産電気自動車「三菱・i-MiEV」が発売されました。直後に三菱自工のご厚意で、試乗させてもらいました。静かなだけでなく、パワフルな走りに驚きました。特に、坂道を登った時の印象が強く残りました。ガソリン車なら、アクセルを踏み込み、エンジン音を轟かせて登るわけですが、まるで平地と変わらない静かさで、力強く登っていきました。ただし、当時の航続距離は、1回の充電で100km程度と心許ないものでした。その後、2011年に東日本大震災が発生すると、世の流れは、一気に電気自動車へと向かいます。

当時、トヨタは2020年をガソリン車最後の年と決めた、という話が広まっていました。すると、まずは、リチウムイオン二次電池の開発競争が起こります。軽量小型化、そして航続距離を伸ばす競争が繰り広げられ、自動車メーカーと電池メーカーとの様々なプロジェクトが起ち上がりました。一方で、エンジンや変速機関係の下請け会社は、メイン業務が無くなるわけで、他の製品の開発を急ぐことになります。ま、世界中の車がEVに変わるわけでもないのですけどね。EVはブームの兆しを見せていたわけですが、なかなか航続距離は伸びず、車両価格は高価、さらにはリチウムイオン電池の安全性が取り沙汰されたこともあり、言うほどの進展はありませんでした。

EV化の流れを大きく変えたのは、テスラ社の快進撃だったと思います。テスラ社は、2003年に創業していますが、スペースX社のイーロン・マスクが中心となって巨額の投資を集めます。2008年、イーロン・マスクがCEOに就任すると、高級EVスポーツ・カー「ロードスター」が初の量産車として発売されます。ロードスターは、生産台数が少ないものの、EV界の起爆剤になったと言えます。その後も、続々と新車を投入、航続距離も650kmまで伸ばしています。テスラの成功によって、世界の大手自動車メーカーもEVを発表、他産業からの参入も相次いでいます。しばらくの間は、ガソリン・エンジンと併用するハイブリッドが中心になると思われていましたが、テスラの快進撃が、EV化を一気に進めたように思われます。

EVのメリットは、もちろん脱炭素ということではありますが、他にも多くあります。ランニング・コストが安い、エンジンや変速機が不要なため部品数や消耗品が大幅に少ない、モーターはエンジンよりも小さく関連部品もないのでスペースを広くとれる、モーター駆動なのでワン・ペダルでの運転が可能、モーターはスタート時から最大トルクを発生する、バッテリーを床下に置くため車体が安定する等々です。一方、問題としては、バッテリーの容量、つまり航続距離の問題があります。これは、社会インフラとの関係もあります。ガソリン・スタンドに比べ、充電ポイントは、まだまだ少ないのが現状です。また、1回の充電に要する時間が、まだまだ長いことも課題だと言えます。

車体をソーラー・パネルで覆い、タイヤの回転から発電し、なんなら風車までつけて走れば、永久運動が可能なのではいか、とトヨタの人に言ったことがあります。そんな程度の発電量で、車を駆動させることはできないと言われました。太陽光、風力など代替エネルギー系は、発電効率が悪いのだそうです。だとすれば、いかにEVがエネルギー効率が良いとしても、元の電力供給が代替エネルギー系に置き換われば、非効率、あるいは電力不足に陥るのではないかと心配してしまいます。いずれにしても、EVは、ようやく幼稚園に入園したくらいなのではないでしょうか。我が家の車も買換えの時期を迎えているのですが、まだEVという選択肢はないと思っています。(写真出典:ja.wikipedia.org)

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