2022年11月24日木曜日

豪雪

今年も、各地から降雪、冠雪のニュースが届く季節になりました。私は、北国に生まれ、さんざん雪と付き合ってきましたので、二度と雪の降るところには住みたくないと思っています。ただ、転勤は致し方ないわけで、新潟に赴任したことがあります。支社は、新潟市にありました。東京から電話をもらうと、雪で大変でしょう、とよく言われました。実は、新潟市は、雪は降るものの、積もるほどではありません。海風の影響か、佐渡がいい風除けになっているのかも知れません。ただ、越後平野東端の新津丘陵あたりまでいくと積雪は増えます。新潟県の豪雪地帯というイメージは、南の上越・中越地方に由来します。

上越市は、都市部としては、世界一の積雪量と聞きます。上越・中越の家は3階建が多く、玄関は2階にあります。積雪に備えて、出入り口を確保してあるわけです。商店街には、通行を確保するため”がんぎ”と呼ばれるアーケードが設置されています。また、道路脇には、紅白のポールや、下向きの矢羽根と呼ばれる標識が立っています。これらは、積雪時に路肩の位置を示すために設置されています。新潟の雪は、北海道のパウダー・スノーとは異なり、重く湿っており、積もりやすい雪です。ですから、屋根の雪下ろしは欠かせません。怠れば、雪の重さで家が潰れます。一度、南魚沼の六日町市街で、商店の庇が雪の重みで崩落する瞬間を見たことがあります。

関越自動車道の塩沢石打サービスエリアは、冬場、平屋の建屋が倍の高さの雪に囲まれます。 それほどの雪でも、除雪態勢が整っているので、高速道路が通行止めになることは滅多にありません。聞いた話ですが、かつて、東京本社から十日町営業所に、朝、電話をしたところ、応答がなく、支社でも連絡がとれない事態が発生します。昼近くになって、ようやく十日町から連絡が入ります。2階建ての営業所が雪に埋まり、皆で掘り起こしていたというのです。大袈裟な話だと思い、十日町で、事の真偽を聞いたところ、事実、そういうことがあったと言っていました。それ以来、十日町営業所には、除雪機が常備されています。

それほどの雪ですから、冬場の戸外での活動は制約されます。かつて、上越・中越の農民たちは、冬場、家で内職に励むか、杜氏として出稼ぎに出たものだそうです。いずれも、金属加工、酒造として現在に継承されています。中越出身の田中角栄が、初めて国政選挙に出馬した際の選挙公約は、よく知られています。三国峠を削り、積雪をもたらす風を関東平野に流し、雪のない新潟を実現する。また、削った土砂で、海を埋め立て、佐渡を陸続きにする、というものでした。土建業出身の角栄らしい、実に気宇壮大な公約ですが、後の列島改造論につながるのでしょう。ちなみに、角栄初の国政選挙は、落選という結果でした。

新潟に赴任直後、土地の人から注意されたことがあります。上越・中越のお客さまに「今年は雪が少なくて良かったですね」という時候の挨拶は禁物だというのです。と言うのも、スキー場はじめ、スキー客で商売している人たちも多く、さらに土建関係の人たちは、冬場、除雪作業が唯一の収入源となるからです。なるほどとは思いましたが、やはり雪は少ないに越したことはないとも思いました。ただ、その豪雪が、豊かな自然と豊かな恵みをもたらしていることも事実です。新潟は雪国ですが、北国ではありません。春の雪解は、北海道に比べて早く進みます。山の緑が一斉に芽吹く雪国の春は、格別な思いを持って迎えられます。(写真出典:10.plala.or.jp)

マクア渓谷