2022年9月30日金曜日

蘭州牛肉麺

一度食べて見たいと思っていた蘭州牛肉麺を、ようやく食べることができました。神保町の「馬子禄(マーズルー)牛肉面」 は、100年以上の歴史を持つという蘭州の名店から許可を得た日本第1号店として、2017年にオープンしています。馬子禄は、蘭州の牛肉麺店としては唯一、政府から認定された老舗ブランド「中華老字号」の称号を持つ店だそうです。神保町店は、通信販売業の会社が経営しています。北京留学中に、蘭州牛肉麺に惚れ込んだ社長が、馬子禄に頼み込んで開いたようです。昼時は、いつも大混雑なので、なかなか入れませんでした。数年前、東陽町に「重慶小麺」という店がオープンし、食べたらとても美味しかったので、なおのこと本場の蘭州牛肉麺が食べたいと思っていました。

店に入ったのは、夕刻6時半ころでしたが、店内は満席状態。見渡すと、インドネシアかマレー系のご家族2組、他は聞こえてくる言葉からして中国系の方々、という感じでした。入り口で、メニューや追加トッピングを選び、麺の種類を決めます。麺は、丸麺、平麺、三画麺の3種類が、さらに太さで細分化され、「毛細(極細)」から「粗蕎麦棱(太い三画麺)」までの9種類あります。麺は、注文が入ってから、伸ばして作られます。その様子は、ガラス越しに見ることができます。この打ち立ての麺が、もっちりして癖になりそうです。スープは、台湾名物の牛肉麺と同じくあっさりしていますが、大きな違いは、よりスパイシーであることです。とりわけ辛いわけではありません。香菜が効いた薬膳といった風情です。

異国情緒たっぷりの蘭州牛肉麺は、食べる海外旅行だな、と思いました。スライスした牛肉、大根、香菜、葉ニンニク、ラー油が乗っていました。薬膳と思ったからかも知れませんが、スッキリとした食後感、そして妙に元気が出たように思えました。水餃子も食べましたが、依然食べたモンゴル餃子同様、ウイキョウの葉が印象的な味でした。蘭州牛肉麺は、中国で、もっともポピュラーな麺料理だと言われます。広い中国では、全国一律で食べられている料理などほとんどなく、火鍋と蘭州牛肉麺くらいだとも聞きます。安価であることに加え、あっさりとクセがないことが全国的人気につながったのでしょう。中国全土では5万店の蘭州牛肉麺店が営業していると聞きます。

蘭州は、中国北西部甘粛省の省都です。甘粛省は、黄河の西、ゴビ砂漠の南に位置し、かつて河西回廊と呼ばれたシルクロードの要衝でした。現在は、中国最大の埋蔵量を誇る石油の生産地でもあります。また、西域とのつながりから、歴史的にイスラム教徒の回族が多いことで知られます。従って、蘭州牛肉麺は、豚ではなく、牛が使われ、かつ清真料理、つまりハラール認証された料理でもあります。それが、店内にマレー系のご家族がいた理由でもあります。ハラールは、イスラム法上、食べることが許されている食材や調理法を指します。都内のハラール認証店は、大分増えたようです。それでもイスラム教徒にとって、なんでも安心して注文できる店はまだ希少なのでしょう。

どうやら、神保町の馬子禄牛肉面の開店が、蘭州牛肉麺ブームを引き起こしたようです。店舗数は不明ですが、ネット上、ランキングが発表されているくらいですから、かなり存在すると思われます。東京は、中国の人たちが多く暮らしていますから、今まで店が無かったことが不思議なくらいなのでしょう。ちなみに、馬子禄牛肉面の”面”という字は、単純な間違いなのだろうと思いました。ところが、現代中国では、”麺”の簡体標記が”面”なのだそうです。少しややこしい気もします。(写真出典:4travel.jp)

マクア渓谷