2022年9月27日火曜日

ハンブルグ・ステーキ

ハンバーグの起源は、タルタル・ステーキだと言われます。13世紀、西進を続けるモンゴル軍は、ウィーンにまで迫ります。モンゴル軍は、食料に窮すると、老いた馬を食べていたようです。ただ、硬くて、筋張り、食べにくかったため、細かく切り刻み、香辛料を混ぜて、生のまま食べたとされます。これがタルタル・ステーキです。タタールは、モンゴル高原西方に展開するテュルク系やツングース系等の遊牧民の総称だったようです。モンゴル支配のもと、欧州遠征にも従軍しています。侵略を受けた欧州では、モンゴル軍をタタール軍と呼んでいたようです。タルタルのステーキとよばれた所以です。

勇猛さと残忍さで知られたモンゴル軍ですから、タルタル・ステーキも、野蛮な食べ物と認識されていたのでしょう。ただ、挽肉料理として欧州には広がったようです。18世紀頃、ハンブルグ、あるいはスカンジナビアで、挽肉にパン粉を入れて丸め、フライパンで焼く料理が誕生します。これはフリカデレと呼ばれ、低所得者層に人気となり、欧州中に広がります。ハンブルグ発祥とされたことから、ハンブルグ風ソーセージと呼ばれることになります。ハンバーグというよりはミートボールだと思いますが、ヨーロッパ北部の国々、特にスカンジナビアでは、今も定番中の定番料理となっています。

1848年、ドイツでは三月革命が起こります。ナポレオンが敗れた後の欧州では、復古的なウィーン体制が敷かれます。これに対して、産業革命が生んだプロレリアートの不満、民族主義の台頭を背景に、各地で革命が起こります。結果的には、反革命の動きによって革命は弾圧され、自由主義者たちは、ドイツを離れ、新天地アメリカを目指します。ドイツ移民たちは、アメリカにフリカデレを伝え、ハンバーグ・ステーキと呼ばれるようになります。タルタル・ステーキは、実に600年をかけ、地球を半周してアメリカに着き、ハンバーグと呼ばれることになったわけです。そして、20世紀に至り、ハンバーグをパンではさんだハンバーガーが登場します。

ハンバーガーの始まりに関しては、諸説あってはっきりしません。パンにはさめば、何でも食べるアメリカ人ですから、同時発生的だったのでしょう。ただ、1904年のセントルイス万博の会場で、ハンバーガーが売られていたという記録があります。最初のハンバーガー・チェーン店は、1921年、カンザス州ウィチタで創業した”ホワイト・キャッスル”です。中西部を中心に、現在も営業しています。ホワイト・キャッスルのハンバーガーは、スライダーと呼ばれる、小ぶりで四角いスタイルです。最も成功したハンバーガー・ショップと言えば、もちろん、1940年、カリフォルニアに創業したマクドナルド兄弟の店ということになります。

私が、マックで最も好きなメニューは、ソーセージ・エッグ・マフィンです。ハンバーガーには、さほど興味がありません。ハンバーグは好きです。特に粗挽きのハンバーグが好みです。最も好きだったのは、札幌”もうもう亭”のハンバーグでした。形を保つのも難しいほどの超粗挽き、つなぎなしというハンバーグでした。もうもう亭は、ホクレンの直営店でしたが、大分前に閉じています。 粗挽きハンバーグは、タルタル・ステーキの原型に熱を加えたような印象があります。タルタル・ステーキも好物です。タルタルの魅力は絶妙なスパイスの配合にあると思いますが、最近は、肉質に自信があるせいか、スパイスの効きが弱くなる傾向にあります。(写真出典:leon.jp)

マクア渓谷