テキサス・レンジャーは、アメリカで最も古い州法執行官であり、現在は、テキサス州公安局に所属しています。簡単に言えば、警察官ですが、アメリカの場合、警察機構は、各州の権限によって構成されるので、州によって大きく異なります。基本は、郡などの自治体が選出した保安官が、法執行機関の長として、警察組織を指揮します。保安官制度は、英国の伝統を継承しており、シェリフ、マーシャル、コンスタブルといった呼び方があります。ただ、郡単位だけだと、州法の執行が担保されないので、州保安官、州警察、州保安局などが設置されます。テキサス・レンジャーも、このレベルに位置づけられます。
テキサス・レンジャーの歴史は、1821年にメキシコ領内へ入植したスティーブン・オースティンにはじまります。オースティンは、アメリカ人のテキサス入植を推進した人で、テキサスの父とも呼ばれます。入植者たちは、しばしばネイティブ・アメリカンに襲撃されます。もともとは、彼らの土地ですから、当然とも言えます。オースティンは、1823年、10人のボランティアを募って自警団を組織します、これがテキサス・レンジャーの始まりでした。"range"は、範囲を示す言葉ですが、ここでは入植地のことであり、その域内を巡回するといった意味でレンジャーと呼ばれたようです。
テキサス革命時には、騎兵隊として活躍し、3個中隊規模にまでなったようです。共和国が設立されると、警察機能を担うことになります。フロンティアの時代には、州の利権のために、かなりあくどいこともやったようですが、悪人には恐れられ、住民からは一目置かれる存在になります。以降、現在に至るまで、州警察とは別組織として存続しています。レンジャーは、警察官として一定年数の経験を有する優秀者のなかから選抜されるようです。レンジャーは、ボランティアに始まる歴史が重視され、今でも制服はありません。テキサス・レンジャーと言えば、白いテンガロン・ハット、カウボーイ・ブーツ、ガンベルトにコルト・シングルアクション・アーミー銃が定番でした。現在は、ローンスターをあしらった有名なレンジャー・バッジとカウボーイ・ブーツの着用だけが求められているようです。
私の年代にとって、テキサス・レンジャーといえば、なんと言ってもTVシリーズ「ローン・レンジャー」です。1933年に放送されたラジオ・ドラマですが、その後、人気TVシリーズとなり、何度も映画化されています。日本では、1958年に始まるTV放送が大人気となりました。ロッシーニのウィリアム・テル序曲が流れ、白いテンガロン・ハットと黒いアイ・マスクを身に付けたローン・レンジャーが、愛馬シルバーに跨がって登場する姿は、今でも目に焼き付いています。「ハイヨー、シルバー」、「インディアン、嘘つかない」、「キモサベ」等は流行語にもなりました。もっとも「インディアン、嘘つかない」は、日本で勝手に付けた吹き替えであり、アメリカ人に言っても、通用しません。一方、「キモサベ」は、信頼できる親友といった意味で、今でもアメリカ人は使います。(写真出典:texasranger.org)