昆虫は、古くから世界中で食べられてきました。現代でも、広く食べられていますが、先進国では消えつつある食文化です。他の食料が充実し、かつ食用昆虫の供給体制が確立しなかったからだと思われます。とは言え、日本でも、長野県のイナゴ、蜂の子等は有名ですし、フランスのエスカルゴ、各地にあるサソリの唐揚げ等も、立派に生き残っています。酒のつまみの定番サワガニなども、カニではありますが、まぁ、昆虫に近い代物だと思えます。先進国では、美味ゆえ、あるいは希少価値の高い食材として昆虫食が残り、発展途上国では、今でも蛋白源として重要な食材だということなのでしょう。
昆虫を、栄養価や生産コストの面から見れば、なかなか優秀な食材ではあります。体重の約60~70%がタンパク質と言われ、食物繊維、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、亜鉛など、人間に必要な栄養素が多く含まれます。また、飼料要求率、つまり1kgの肉類を得るために必要な飼料の量は、おおよそ牛肉で10kg以上、豚肉で6~7kg、鶏肉で2~4kgに対して、コオロギの場合、2kg弱となっており、大変に効率が良いと言えます。また、可食部も昆虫の100%に対して、牛の場合は40%、豚や鶏は50~60%となっています。生産に必要な農地も格段に少なくて済み、温室効果ガスの排出も相当に低くなっています。
こうしたメリットに着目した昆虫ビジネスが、既に稼働してるようです。昆虫スナックも販売され、昆虫メニューのあるレストランも営業しているようですが、加工食品の原材料としての活用がビジネス化しつつあるようです。こうした動きに対応して、国もガイドラインづくりに入っているようです。日本では、昆虫の工場養殖の取り組みが、各地で進められているようです。コオロギの場合、ふ化から30日で成虫になるそうですが、この間に体重は1,000倍に増加すると言います。ただ、共食いなどといった課題も多く、試行錯誤が続けられているようです。工場養殖は、労働負荷も低く、高齢者の働き口、あるいは過疎地の活性化策としても有力視されているようです。
タイ料理激戦区の小岩にある「いなか村」は大人気店です。「いなか村」には、蛾の白い幼虫の炒め物メニューがあります。日本のタイ料理店で、そんなメニューがあるのは、ここくらいだと思われるので、注文すべきだと思いました。ただ、結果として、注文する勇気はありませんでした。焼いたふぐの白子は、大好物です。恐らく、同じような食感と味なのだろうと想像できます。蜂の子の甘露煮を食べたことがありますが、まさに白子のマイクロ版といった風情でした。だからと言って、幼虫の炒め物を注文する気にはなりません。他に、美味しいものは山ほどありますから。(写真出典:cnn.co.jp)