体内に入ったアルコールを分解するのは肝臓ですが、処理しきれなかったアセトアルデヒドが血中に混入すると、頭痛や吐き気といった二日酔いの症状を起こします。対策としては、水分、タンパク質、ビタミンB、糖質等を補給することだと言われます。日本の二日酔い対策では、よくシジミの味噌汁が挙げられます。オルニチンやタウリンが肝機能を高めるだけでなく、アセトアルデヒドの分解にも有効だとされます。干したらには、タンパク質だけでなく、ビタミンB類はじめ、多くの栄養素が含まれています。プゴクッは、実に理に適った二日酔い対策だと言えます。体に染み入るようなスープに、キムチとご飯を入れれば、さらに二日酔い対策としての完成度を増すわけです。
韓国では、味の良さ、栄養の高さから、料理に干したらをよく使うようです。韓国の干したらは二種類あります。風干しのプゴと、凍結乾燥のファンテです。北東部カンウォンド (江原道)産のファンテが最も品質が高いとされます。冬期オリンピックが開催されたピョンチャン(平昌)もカンウォンドにあります。そもそも日本海でのたら漁も盛んなのでしょうが、極寒で乾燥した土地柄が、良質な干したらを作るということだと思います。おおよそ魚介類は、乾燥させると、うま味が凝縮されるものです。日本では、棒鱈として知られ、古くから保存食として北日本で作られ、北前船に乗って日本各地に広がりました。京都平野屋の名物いもぼう等が、代表的な料理です。北欧でも作られ、輸出先であるポルトガルのバカリャウ等はよく知られています。
韓国の食文化の特徴は、スープ類にあります。韓国のスープ類は、日本の主菜と味噌汁が一緒になったようなイメージです。韓国の人にとって、スープのない食事など食事ではない、とも聞きます。スープ類は、薄めのスープである”クッ”、じっくり出汁をとった”タン”、熱いスープの鍋類”チゲ”、スープ少なめの鍋”チョンゴル”などに分類されます。これに、様々な出汁、様々な具材、様々な調味料が組み合わされ、さらには地方による調理法の違いも加わり、実に多くのスープ類が存在します。代表的なクッとしては”ミヨックッ(わかめスープ)”があり、クッにご飯を入れると”クッパ”になります。タンはサンゲタン、ソルロンタン等、チゲはキムチチゲやスンドゥブチゲ等が良く知られています。韓国は、まさにスープの国です。
実は、干したらさえあれば、家でも簡単にプゴクッを作れます。干したらを、10分程度、水で戻し、水分を切って、ごま油とすりおろしにんにくで軽く炒めます。そこに水とダシタを加えて煮ます。ダシタは、実に便利な牛肉出汁です。最後に長ネギと溶き卵を入れて完成です。薄切りの大根や他の野菜を加えれば、一層スープらしくなります。一番、面倒のないプゴクッは、裂いた干したらに水とダシタを加えて煮て、ごま油をかければ出来上がります。コロナ禍で激減していた飲み会が復活しつつあります。干したらを買っておいた方がいいかも知れません。(写真出典:tripping.jp)