2022年6月4日土曜日

ナイアガラ

滝の大規模なものを瀑布と呼ぶのだと思っていました。正しくは、川の水が河床を離れて,高いところから直接落下するものが瀑布なのだそうです。大小は関係ないようです。また、勾配の急な河床を水が下るところは早瀬といい、二つを総称する言葉が、滝なのだそうです。世界三大瀑布と言われるのが、アルゼンチンとブラジルに跨がるイグアスの滝、ザンビアとジンバブエに跨がるビクトリアの滝、そしてカナダとアメリカに跨がるナイアガラの滝です。いずれも、日本の風情あふれる美しい滝とは大違いの迫力ある瀑布であり、まさに大自然の驚異といった感じです。

昔、ナイアガラまで家族で出かけたことがあります。宿泊したNY州のバッファローまで、6時間くらいのドライブです。長時間、車を運転することが苦手な私にとっては、なかなかの苦行でした。シラキュースやロチェスターで一休みしながら運転しました。シラキュースは大学で有名な街です。また、ロチェスターも学術都市として有名であり、ボシュロム、イーストマン・コダック、あるいはゼロックス発祥の街でもあります。バッファローは、エリー湖とハドソン川を経由してNYまでつながるエリー運河沿いの街であり、交通の要所として栄えてきました。また、豊富な水と電力は、製鉄や製粉を盛んにさせました。NY州では、NYシティに次ぐ規模の都市です。フットボールの強豪ビルズの本拠地でもあります。

バッファローという地名は、昔、バッファローが多く生息していたから命名されたと思っている人が多いと思います。私もそうでした。ところが、バッファローは、一頭もいなかったようです。バッファローの語源は、美しい川という仏語の”beau fleuve”だとされます。アメリカの居酒屋では定番となっているメニューの一つに”バッファロー・ウィング”があります。初めて聞いた時には”野牛の翼”とは何だと驚きましたが、実はバッファロー発祥の手羽料理のことです。素揚げした手羽元に、辛味と酸味を効かせたソースをからめた料理です。辛さの段階を選べる店も多くあります。1960年代に、市内のアンカー・バーで誕生したとされます。80年代には全米で知られるようになり、ビルズの活躍とともに定番化したと言われます。

ナイアガラの語源は諸説ありますが、いずれにしてもイロコイ族かモホーク族の言葉のようです。観光はカナダ側からが定番です。”霧の乙女号”で滝壺に近づいたり、滝を裏側から見たりといったアトラクションがあり、また周辺はカジノも含めて思いっきり観光化されています。南北戦争後から、鉄道会社が、観光と新婚旅行のメッカとして宣伝を始めたようです。実に長い歴史を持つ観光地なわけです。かつては日本人にとっても憧れの観光地であり、アメリカ観光の定番の一つでした。もちろん、日本にはないダイナミックな光景ですから、一度は見るべきとも思いますが、私にとっては、それ以上でも、それ以下でもない、といった印象でした。最も印象に残ったのは、滝を上から見ていると引きずり込まれそうになることです。実に不思議な感覚です。ま、これはどこの滝でも同じなのでしょうが。

昔、ヘンリー・ハサウェイ監督のミステリー映画「ナイアガラ」(1953)が、アメリカでも、日本でもヒットしました。ナイアガラの知名度アップ、観光促進の一助になったものと思われます。少し皮肉な言い方をすれば、ナイアガラが舞台だからヒットしたのかも知れません。この映画には、もう一つヒットした要因があります。当時、注目を集めつつあったマリリン・モンローの初主演作だったことです。腰を振って歩く、いわゆる”モンロー・ウォーク”は、彼女の名を世界中に知らしめました。モンロー・ウォークで歩く姿を後ろから撮った場面は、映画史上、最も長い歩行シーンとして有名です。マリリン・モンローの腰は、ナイアガラ級だったとも言えそうです。(写真出典:his-j.com)

マクア渓谷