高温多湿なジャカルタの夜明けは、靄のかかったような空気に満たされます。そして、濃い緑を通して、市内各所のモスクで唱えられるアザーンが響き渡ります。イスラム教国で、朝の美しいアザーンを聞くと、とても清々しい気持ちになります。思わず、イスラムに帰依したくなります。アザーンは、一日5回の礼拝の時間を、モスクのミナレット(尖塔)から伝えます。今は、皆、スピーカーを使いますが、エコーがかかって一層エキゾチックになります。アザーンの節回しは、国や宗派によっても、あるいは人によっても多少異なりますが、「アッラーフ、アクバル(アラーは偉大なり))」に始まる言葉は、ほぼ同じです。ダルマワンサのベランダから聴くジャカルタのアザーンも美しいものでした。
私の回りでは、ヨーロッパであろうが、アジアであろうが、米系のホテルを選択する人が多い傾向があります。何故かと聞くと、レベル感が分かりやすく、なじみ深く、慣れており、セキュリティも安心できるから、との答えが返ってきます。よく理解できる話ではありますが、せっかく見知らぬ土地へ行ったら、その土地の文化を感じるべきだと思います。ホテルも、わざわざ世界共通の米系ではなく、その土地ならではのホテルを選ぶべきだと思います。旅行なら、なおさらですが、例え出張であっても、その国を理解するためにローカルなテイストのホテルがいいと思います。ジャカルタのホテルとして、ダルマワンサを選んだ理由でもあります。
ダルマワンサには、空港での無料出迎えサービスがあります。使いますか、と聞かれました。初めての街、大都会の空港、しかも夜の到着だったので、お願いしました。なんとなく見当はついていたのですが、愛想のいい、慣れた感じのおじさんが、ゲートのところまで出迎えてくれました。彼は、空港スタッフとは顔なじみらしく、心付けをばら撒きながら、入国手続き、関税手続きを、VIP待遇で通過させてくれました。無料サービスと聞いていましたが、当然、おじさんにはそれなりのチップを渡しました。見事なまでに発展途上の国らしい光景ですが、これも含めて土地の文化です。着陸直後ですが、即座にインドネシアの社会的現状を理解することができました。
企業訪問の合間に、市内のショッピング・モールを見学しました。当時、ジャカルタは、ショッピング・モールの建設ラッシュでした。モールに出ている店など、世界中、どこでも同じようなものです。ただ、そのモールのセンターには、アイススケート・リンクがありました。南国では珍しい贅沢な施設だったのでしょう。また、郊外にあるお客さまの工場も見学しました。中心部を離れると、未舗装の道路にはバイクがあふれ、沿道には泥と埃にまみれた貧しい家が軒を並べます。工場の近くには、スナック、果物、揚げ物等を商う屋台がたくさん出ていました。工員たちの胃袋を満たすためなのだそうです。貧しいながらも、活気にあふれた様子が、インドネシアの発展を象徴しているように思いました。(写真出典:the-dharmawangsa.com)