2022年4月26日火曜日

楚辺そば

楚辺そば
沖縄では、そばとぜんざいを商えば食いっぱぐれが無い、と言われるそうです。沖縄には、無数に沖縄そば店があります。観光客目当てもあるでしょうが、やはり、沖縄の人たちは沖縄そばをよく食べるということなのでしょう。ちなみに、ぜんざいとは、金時豆のかき氷のことです。わたしは、30年前、58号線沿いの大きな店で、初めて沖縄そばを食べました。店名は「なかむら」だったと思うのですが、現在の建屋が記憶と違います。30年も経てば、色んなこともあって、今の佇まいになっているのかも知れません。いずれにしても、とても美味しくて、一発でファンになりました。

以来、沖縄に行く都度、様々な店で食べてきました。沖縄そばが好きだと言うと、沖縄の人たちが、あそこへ行け、ここがうまいと、教えてくれました。沖縄そばは、店によって味が大きく異なります。出汁の違い、麺の打ち方の違い、ソーキ等の味付けが千差万別であり、そこが、また面白いと思います。しばらくは”首里そば”が気に入って通っていました。民芸風にしつらえた室内でいただく、バランスの良い上品な沖縄そばです。クリアなスープと歯切れの良い麺は、飽きのこない味だと思います。また、炊き込みご飯の”じゅーしー”も、あっさり系で美味しくいただけます。行列店ですが、並ぶ価値はあります。問題は、駐車場です。首里という土地柄、近くに駐車場がなくて、やや難儀します。

近年、一番のお気に入りは”楚辺そば”です。数年前、地元の人から聞いて行った店です。やはりバランスの良い出汁ですが、首里そばよりも庶民的で、力強さを感じます。麺は細麺。沖縄そばに限らず、私は細麺派なので、まさにストライクでした。力強さを感じるのは、恐らく油分が多いからなのだと思いますが、それが食べ応えにもつながります。古民家を使った店ですが、今風に改装したものではなく、まるで居抜き状態。かつての那覇の庶民の生活を偲ばせて趣きがあります。ただし、楚辺そばは、アクセスが難関です。都心にあるのですが、やや高台になるせいか、開発が遅れた住宅地のなかにあります。まったく人に説明できません。初めて行った際、レンタカーを使ったのですが、たどりつけたのは、本当に奇跡だと思いました。

沖縄そばは、明治末期頃に誕生したようです。中国人が中華そば屋を開店します。高価なものだったようです。そこで修行した比嘉さんという人が独立し、通称「ベェーラー」そば屋を開業します。この店は、地元の味と庶民価格で人気を博します。これが沖縄そばの起源だと言われます。麺は、小麦粉100%、伝統的にはかん水を使わず木灰を使います。例えば、首里そばは、木灰そばが売りです。出汁は、豚と鰹のダブルスープが基本ですが、この割合によって店の味が大きく異なってきます。具材としてはソーキが有名ですが、これは1967年に名護の我部祖河食堂が始めて出したとされます。また、沖縄そばには、島唐辛子を泡盛に漬け込んだコーレグースも欠かせません。

沖縄そばという名称については、本土復帰後、一悶着ありました。公取委が、そば粉を使っていないので”そば”とは呼べないと指摘します。県民の粘り強い折衝の結果、78年に至り、公取委が沖縄そばを公認しました。沖縄の人々の沖縄そばへの愛情を感じさせる話です。もう一つ、県民の愛情を感じさせると思うことがあります。生蕎麦、うどん、ラーメンは、そのバリエーションの豊富さも特徴的ですが、沖縄そばには、さほどのバリエーションは存在しません。伝統の味、一本槍です。沖縄の気候、風土、生活等に、実にマッチした食べ物ゆえに、バリエーションを広げる必要性がなかったのかも知れません。(写真出典:tripadvisor.com)

マクア渓谷