湯之元温泉郷は、江戸初期開湯という歴史ある温泉です。その駅前の商店街のなかに梅月堂はあります。行ったことはありませんが、グーグル・アースで見る限り、かなりひなびた商店街にあるごくありふれた和菓子屋の風情です。大正10年創業で、温泉客相手に”湯之元せんべい”を売っていました。ネットで見る限り、上に山椒の葉が焼き込まれた、なかなか美味しそうなせんべいです。よくある温泉せんべいとは少し変わっており、独創性を感じさせます。また、“めれどら焼き”も看板商品とのこと。しっとり系の皮ということなのでしょうが、これまた独創性を感じさせます。
ラムドラは、2016年に発売されています。店を継ぐために、東京から戻った4代目が考案したようです。開発コンセプトは、働く女性がこれを食べたらまた明日から頑張れるご褒美になるもの、そして和菓子の中で一番とんがったものをつくることだったそうです。大豆も変え、ラムレーズンも自家製にするなど試行錯誤を重ね、半年ほどで完成したと言います。ラムには、ラムの代名詞とも言えるマイヤーズのダークラムを使うこだわりようです。完全に手作りのラムドラですが、大粒のラムレーズンも、職人の手によって、きっちり7粒づつ入れてあるようです。どこから食べても、ラムレーズンが味わえるためのこだわりだと言います。
ラム酒は、サトウキビから砂糖を精製する際に出る廃糖蜜(モラセス)をアルコール発酵させ、さらに蒸留して樽熟成させたものです。カリブ海に欧州からサトウキビが持ち込まれ、砂糖生産が始まるとともに、生まれた酒です。18世紀以降、英国海軍が水兵たちに支給し、カリブの海賊たちも好んだ酒として有名です。カクテル・ベースとしては、ジンやウォッカと並んで消費が多く、また菓子作りにも活用されています。ラムドラが使っているマイヤーズは、19世紀、ジャマイカで創業されました。ダークは、ホワイト・オークの樽で、平均の倍となる4年熟成されたラムです。この芳醇さがなければ、餡子とのマリアージュも成立しません。
そもそも私は、レーズン好きです。六花亭のマルセイ・バター・サンドをはじめとするレーズン・サンドは好物です。なかでも、ラムレーズンは大好物と言えます。ラムレーズンは、チョコレートとの相性も抜群であり、他にもチース・ケーキ、パウンド・ケーキ、アイスクリーム等にもよく使われています。それを餡子と合わせるとは、誠に秀逸なアイデアであり、実にいい塩梅で一体化させています。昔からなかったのが不思議なくらいです。(写真出典:gurusuguri.com)