2022年2月7日月曜日

サブスク

アメリカの音楽市場の70%を古い曲が占めている、という記事を読みました。また、音楽ストリーミングで、人気のある曲に占める新曲の割合は5%未満にすぎないとも書かれていました。この傾向は、この2~3年で進んでいるそうです。コロナ禍のステイホームで、ノスタルジックな音楽が好まれる傾向もあるようです。また、音楽業界は、強化された著作権法を恐れ、新曲のプロモーションに消極的だとも言われます。サブスクリクション、いわゆるサブスクによる影響も指摘されていました。案の定、恐れていたことが起きているな、と思いました。

サブスクリクションは、もともと雑誌などの定期購読を意味しましたが、IT時代を迎え、ソフトウェアの年間使用料等に応用されるようになりました。さらに動画配信から音楽配信へと拡大され、無制限にコンテンツを利用できるサービスへと拡大してきました。現在では、車、飲食、旅行までと、ありとあらゆるものまでサブスクの対象となっています。所有という概念が、ネットの世界から崩れ始め、物にまで広がりつつあると言えるのかも知れません。サブスクの対象によって、利用者や事業者に与える影響は、かなり異なります。なかでも音楽については、映像や物と比べて、その影響は相当に深いと思います。

音楽のサブスクで世界制覇しているのはスポティファイです。2006年に、ストックホルムで創業されたスポティファイは、世界中の2億人に対して、5,000万曲以上の楽曲をサブスクで提供しています。日本に進出した頃、友人から、もうCDを買ったり、ネットでダウンロードする時代じゃない、とスポティファイを勧められました。私が好んで聞く音楽のなかで、古いサンバや西アフリカのファンクなどは、スポティファイには無いと思うよ、と反論すると、4,000万曲(当時)だよ、あるに決まってると言われました。実際には、ほとんどありませんでした。今は、サービスを提供する国も178カ国に広がったそうですから、ひょっとすると対象になっているかもしれません。

音楽のサブスクで最も気になるところは、音楽のコモディティ化です。スポティファイがもたらすのものは、音楽を聞き流す文化です。いわばカフェの有線放送の個人化です。もちろん、コモディティ化していい音楽もありますが、すべての音楽が聞き流すものになってしまうということは、聞き流すタイプではない音楽の排除につながり、やがて音楽そのものの衰退を招く懸念があります。ミュージシャンの収入低下だけでなく、新しい才能が出てこなくなる恐れもあります。当初、テイラー・スウィスト、キング・クリムゾン、メタリカ等が、この点を批判していましたが、その後、勢いには勝てず、楽曲を提供しているようです。

スポティファイにも、多くのメリットがあることは認めます。一つは、かつて横行した海賊版の撲滅です。各レーベルがスポティファイと契約した大きな理由でもありました。また、音楽が、真に国境を越えた存在となり、しかも即座に国境を越えていく点は、ネット文化の利点そのものだと思います。しかしながら、音楽サブスクによって記憶媒体が一掃され、レアな音楽が入手できなくなること心配しています。(写真出典:icon-icons.com)

マクア渓谷