Atom Heart Mother |
バンドがプロフェッショナルな音楽を提供するというよりは、同好会の例会といった風情であり、違和感を感じた次第です。別な店であっても、バンドと常連との関係は、同じように濃密である場合もあるとは思いますが、それは、あくまでもプロとファンとの関係だと思います。アビー・ロードでは、バンドも常連も、同じビートルズ・ファンとして、供に楽しんでいるという不思議な空間だったように思います。同好会なら、それで良いのだと思いますが、こっちはお金を払って聞きに行っているわけで、そこに気持ち悪さを感じました。同好会ビジネスとでも言いたくなります。そこには、当然、バンドの甘えも生まれ、プロ意識も希薄になるではないかとも思いました。
先輩に誘われて、ピンク・フロイドのトリビュート・バンドのライブに行きました。アルバム「原子心母」を再現するというのです。そもそもピンク・フロイドの音楽は好みではないのですが、ライブに飢えていたこともあり、行ってみました。会場には、やはり同好会的雰囲気が漂っていました。ただ、とてもレベルの高い演奏であり、特にリーダーのギターは、かなりのものでした。残念だったのは、PAが、爆音指向なのか、時折、ハウリングのような嫌な音が入り、気になりました。また、チェロの音の拾い方がひどくて、チェリストがかわいそうだと思いました。結果的には、やはりピンク・フロイドの音楽には興味が持てなかったのですが、演奏を聴いているうちに、素朴な疑問が沸いてきました。
オリジナルをよく知らないので、これは完コピなのか、と先輩に聞くと、ほぼほぼ完璧だと言うのです。完コピと言えども、オリジナルとは異なるはずです。マニアックなファンとしては、完コピであればあるほど、オリジナルとの違いが気になるのではないかと考えます。そこのところを聞いてみると、確かにそうなんだけど、よくぞここまでコピーしてくれた、という感じなのだそうです。少し皮肉な言い方をすれば、ピンク・フロイドの音楽は、コピーでも楽しめる、あるいはコピーできちゃう音楽ってことですか、と聞いたところ、そうだよ、だってスコアに落とせる音楽だから、とのお答え。なるほどです。これが、ツェッペリンのコピー・バンドなら、まるで別物になってしまうけどね、とも言っていました。
コピー・バンドには、カバー・バンド、あるいはトリビュート・バンドと、様々な呼び方があるようです。あるいは”ものまね”と言ってもいいのかも知れません。やってる方は、面白くてしょうがないのだと思います。アマチュアなら、何の問題もありません。オリジナルにインスパイアされた音楽というのも、理解できます。ただ、プロとして完コピを目指すバンドというのは、なかなか腑に落ちない点も多い不思議な存在です。(写真出典:amazon.co.jp)