2022年1月1日土曜日

壬寅

十干十二支、いわゆる干支で言えば、2022年は「壬寅(みずのえとら)」となります。十干は、「木・火・土・金・水」の五行の陰と陽で構成され、物事の盛衰、移り変わりを現わします。 「水」は、次なる新たなステージを準備する段階であり、陽をはらむ「壬(みずのえ)」と地ならしを意味する「癸(みずのと)」の2年からなります。十二支の「寅」は、動く、あるいは延ばすという意味を持ち、草木が芽を出す状態を表すと聞きます。五行の関係を示す「相性(そうせい)」で言えば、「壬寅」は、「水生木」、つまり水が木を生み出すという年となります。

大雑把に言えば、「壬寅」は、次なる大きな成長や変化が胎動する、あるいは備える年ということになります。過去の「壬寅」の年を振り返ってみると、まずは1962年ですが、最も大きな出来事の一つとしてキューバ危機が挙げられます。第二次世界大戦後に始まった東西冷戦は、朝鮮戦争を経て、核爆弾の開発競争へと入っていきます。キューバ危機は、その危険なレースがもたらす最悪の事態、つまり核ミサイルの打ち合いによる人類滅亡という恐怖を実感させました。結果的には、直前で最悪の事態は回避されましたが、以降、ヴェトナム戦争、プラハの春、度重なる中東戦争、若者による反体制運動など、いわゆる激動の60年代が本格化していきます。

さらに、その前の「壬寅」である1902年は、産業革命を背景とする植民地争奪戦が国際的緊張を高めた時代でした。列強による清国の利権争いが激化し、満州と朝鮮を巡る日本とロシアの争いは、1904年の日露戦争へとつながりました。産業革命の一つの帰着である金融資本の成熟、市場の独占化が、持てる国と遅れてきた国との間に戦いを生んでいきます。激しさを増した植民地獲得競争は、抜き差しならない状況へと展開し、1914年の第一次世界大戦、そして第二次世界大戦を勃発させます。産業革命による科学技術の進歩が、武器の殺傷能力を異次元のレベルまで高め、いわゆる国家総力戦の時代を生みました。1902年は、20世紀前半、世界を揺るがした二つの大戦が、まさに胎動し始めた年だったと言えます。

また、1842年の「壬寅」には、清と英国のアヘン戦争が終わり、その後の中国の半植民地化を決定づけた南京条約が結ばれました。香港割譲もここで決まっています。中国の苦難の近代史は、ここに始まるといってもいいのでしょう。南京条約に衝撃を受けた政権の一つが、江戸幕府でした。古代から中国は東アジアの中心であり、日本は大国である中国を先達として、あるいは脅威として歴史を刻んできました。その中国が、いとも簡単に西洋文明に屈したことは、まさに衝撃だったわけです。この年、江戸幕府は、異国船打払令を廃止、難破船に対する薪水給与令を出しています。開国から明治維新につながる激動の時代が胎動し始めた年といえるのでしょう。

さて、今年はどのような年になるのでしょうか。米中戦争とも呼ばれる両国の緊張は高まり、台湾海峡の危機も懸念されています。ロシアは、ウクライナ周辺に兵力を集結させつつあります。まさにパクス・アメリカーナの終焉を伝える現象と言えます。ネオ・リベラリズムやグローバリズムが、資本主義を衰弱させ、経済格差の固定化を加速させているように思えます。一方で、それらは、独裁国家や独裁的国家を勢いづかせる結果にもなっています。また、ネットはじめテクノロジーが世界を変えつつあり、その行きつく先は、まだ不透明です。さらに3年目に入る新型コロナ禍は世界をどう変えるのか、加速する温暖化による影響はどこまで広がるのか等々、これまで経験したことがないほどダイナミックな変化が、地球と人類を覆いつつあります。少なくとも、今年は、次に来る大きな変化の胎動を見逃さないように目を大きく見開くべき年だと思います。ま、とりあえずは、カタールでのサッカー・ワールドカップに日本代表が出場出来るかどうかに注目ですですが。(写真出典:jbpress.ismedia.jp)

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