2021年12月31日金曜日

年越そば

今年も、あと3日となりました。新型コロナ・ウィルスは、オミクロン株の感染拡大は気になるものの、感染数が落ち着きを見せていることから、いつも通りの年の瀬が戻りつつあるようです。TVでは、2年振りとなる帰省客で混雑する空港、駅、高速道路、そして、正月向けの買い物客で賑わう街が映し出されています。大晦日のTVニュースでは、御徒町の雑踏や来年の干支などが定番ですが、夜遅くまで混雑する蕎麦屋の映像も必ず登場します。麻布十番の更科堀井などは、TV朝日が近いこともあり、毎年、見ているような気がします。

20年以上前のことですが、年越し蕎麦は神田の藪に限ると言う上司がいて、仕事納めの日、納会の後、幹部だけで藪蕎麦へ通っていた時期があります。大晦日ではないものの、既に大混雑で、長蛇の列が出来ています。寒い中、1~2時間待たされると、勢い、同じくらいの時間は飲まないと気が済まなくなります。年越し蕎麦を食べるのは当然としても、なにも混み合う蕎麦屋へ出向いて食べる必要はないのに、と思ったものです。年越し蕎麦を、蕎麦屋で食べるか、家で食べるかは、その家々の習慣によるのでしょうが、東京都心で生まれ育った人は、蕎麦屋に行きたがる傾向があり、私も含め、田舎者は、家で、年越し料理の一部として食べることが多いように思います。

蕎麦切りは、16世紀、信州で生まれ、その後、江戸で大人気となったと聞きます。当然、年越し蕎麦は、江戸期に始まり、定着した風習ということになります。江戸中期の文献に、商家での三十日蕎麦という習慣が記載されているようです。要は、月次決算後、今月もご苦労さまでした、来月も頑張りましょう、ということだったのでしょう。それが、年越し蕎麦につながったと言われます。忙しい農家などにとって、打つ手間のかかる蕎麦やうどんなどは、ハレの日、あるいは節目の食べ物でした。その伝統が反映されているのでしょう。いずれにしても縁起物であり、年越し蕎麦を食べる理由も後付けされ、様々、伝わっています。

最も多く言われているのは、蕎麦は細く長いので、あやかって長寿を願う、ということだと思われます。また、金の細工師が金粉を集めるためにそば粉の団子を使うことから富に恵まれるという説もあります。あるいは蕎麦は、厳しい気候でも育つことから、苦境にも負けない強さを得るという話もあります。ただ、いずれの話も、大晦日に食べる必要性は乏しく、新年の縁起物でもいいわけです。蕎麦は、切れやすいので、今年の災いを切って、来年に持ち越さないという説もあります。これなら、大晦日に食べる意味があります。実のところは、恐らく、大晦日、大忙しの商家にとって、事前に打っておけば、茹でるだけという簡単な食事として重宝したということではないかと思います。

日本における最初の新型コロナ感染は、2020年1月15日に確認されました。パンデミックならば、収束まで、最低3年かかるだろうと思っていました。もうすぐ2年が経ちますが、未だ終わりは見えていません。来年中に、ワクチンのブースター接種が行き渡り、治療薬が普及することを期待しますが、もう少し時間がかかりそうです。今年の年越し蕎麦は、疫病退散を願いながら、すすり上げることにしようと思います。(写真出典:gnavi.co.jp)

マクア渓谷