Pryce Pryce-Jones |
1912年、メイン州フリーポートに創業したL・L・ビーンは、”ビーン・ブーツ”と呼ばれるゴムボトムのハンティング・シューズ、あるいはアメリカ人のアウターの定番”フィールド・ジャケット”が有名です。大統領たちもカタログ通販で購入していました。アメリカの丈夫で頑丈なアウトドア・ウェアは、登山、釣り、ハンティングといった趣味の分野だけではなく、田舎で一次産業に従事する人たちにとっても、ジーンズ同様、なくてはならないアイテムです。一方、広すぎる国土では、実店舗へのアクセスが極めて悪く、鉄道と郵便小包が発展するとともに、メール・オーダーが普及したのは当然だったのでしょう。
アメリカの通信販売は、19世紀末、シアーズ・ローバックのダイレクト・マーケティングによって本格化したと言われます。シアーズのカタログは、消費者の聖書と呼ばれるほど広範に行き渡っており、衣料品、日用品から、家や車まで掲載されていました。シアーズは、モータリゼーションの到来とともに、ショッピング・モールの中心として実店舗展開を加速、80年代、ウォルマートに抜かれるまで、全米一の小売業でした。近年、ウォルマートやシアーズといった実店舗は、アマゾンはじめネット通販に押されっぱなしです。通販でアメリカを征したシアーズが、ネット通販に負けるという皮肉な展開になっています。
世界最初のカタログは、15世紀末、ヴェネツイアの出版業者が作った本のカタログだとされます。本格的なメール・オーダーは、19世紀、ウェールズの事業家プライス・プライス・ジョーンズによって開始されました。ジョーンズは、メール・オーダーのパイオニアと呼ばれています。ウェールズ名産のフランネルが主力商品でしたが、実は寝袋を発明したのもジョーンズです。彼は、鉄道の駅の隣に、自前の郵便局と倉庫を作り、迅速な発送を実現し、その顧客を世界中に広げました。ヴィクトリア女王、ナイチンゲール、あるいはロシア軍も、彼の顧客だったそうです。鉄道の発展は当然ですが、1840年の郵便改革が、ジョーンズのビジネスを生んだと言えます。
私は、Amazonのヘヴィー・ユーザーです。アマゾン・ジャパンができる前から、シアトルのAmazonへ、CD等を注文していました。その後、CDだけではなく、ほとんどの書籍をアマゾンで買うようになり、取扱品目が拡大してからは、実に様々な物を買っています。品揃え、無料の配達、早い配達が、アマゾンの利点なのでしょうが、なにせ、思いついたら、24時間、いつでも、すぐに買えるところがネット通販最大の強みだと思います。店舗へ出向く手間がないことはもちろんのこと、考え直す時間を与えないことも、販売量を増やすポイントなのでしょう。本について言えば、欲しい書籍が明確な場合、アマゾンはとても使い出があります。とは言え、たまには本屋を冷やかし、新しい本と出会うことも必要ではあります。(写真出典:newtowan.org.uk)