2021年12月20日月曜日

アニメ効果

BABYMETAL(2015)
久しぶりに会ったロック・マニアの後輩に、最近は何を聞いているのか、と尋ねたところ、アイドルとの答えでした。膨大な数のCDをコレクションしているガチガチのロック・ファンなだけに驚きました。もう一人、マニアックなロック・ファンで、CDを入れた段ボールが6畳一間を天井まで埋めるという後輩を知っています。実は、彼もアイドルのコンサートへ行く、と言っていました。二人とも50歳を超えています。これは面白い現象だと思いました。かつて、ロックのライブが持っていた熱狂に近いものが、今のアイドルのコンサートにあるのかも知れません。しかし、二人とも、相当に耳の肥えたロック・ファンです。単なるライブ感だけとも思えず、一体、ロックとアイドルにはどういう関係性があるのか、気になってきました。

10年ほど前になりますが、当時3人組だった日本の女性メタル・ダンス・ユニット”BABYMETAL”がデビューすると、海外を中心に高い評価を得ました。日本のアイドルとヘヴィ・メタの組み合わせは面白いとは思いましたが、さほど興味も沸きませんでした。ところが、人に勧められて聞いてみたところ、驚きました。かなりレベルの高いサウンドだったのです。要は、フロントの3人はアイドル然としているのですが、バック・バンドには、日本の一流ロック・アーティストたちが揃っていました。ロックを聞くこともありませんし、ましてや日本のロックなど何の興味もなかったのですが、改めて、そのレベルの高さには驚かされました。

それ以降、日本のガールズバンドが、欧州で注目されているようです。いくつかYoutubeで聞きましたが、演奏はなかなかのレベルです。BABYMETALは、突出したケースかもしれませんが、どこかにロックとアイドルとの結合点があるはずだと思い、探してみると、アニメに行き当たりました。要は、80年代頃と思われますが、食えないロック・ミュージシャンたちが、スタジオ・ミュージシャンとして、アニメやゲームの音楽に流れていったようです。アニメの市場が大きくなるとともに、主題歌もヒットするようになり、いわゆるアニソンというジャンルまで確立していきます。アニメ市場の規模が拡大し、多様化したことで、ロック・ミュージシャンたちも、自分たちのテイストを出しやすくなったわけです。その後、アニソンからアイドルへの展開は、さほどのハードルもなかったものと思われます。

日本のアニメの市場規模は、順調に拡大し、2兆円に達しているようです。国内市場が大層を占めていたのが、ここ5年くらいで海外が急速に伸び、現在は半々くらいまできたと聞きます。この規模になると、当然、裾野の広がりも出てきます。TVのみならず、映画、ネット配信、音楽、グッズ、書籍も大きな市場になっているようです。さらに映画に関しては、ハリウッドの映画化が進んでいますし、近年では、コンテンツ・ツーリズムとして、いわゆる聖地巡礼が大きな市場になりつつあるようです。海外からの巡礼者も増加しているようです。ついにはアニメ・ツーリズム協会なるものまで登場し、現在88作品、124カ所が登録されているとのことです。2019年には「アニメツーリズム首長サミット」も開催されています。

アニメは、子供向けやオタクの域をはるかに超えて、産業化されつつあります。外国人がクールと思える日本の文化を海外に発信し、そのブランド化を狙うのが政府のクールジャパン戦略です。韓国のコンテンツ政策を見習ったものなのでしょう。アニメは、食やポップ・カルチャー等とともに、クールジャパンの目玉になっています。批判も少なくないクールジャパン戦略ですが、日本アニメの海外における急成長は、その効果の一つとも言えるのでしょう。ちなみに、今年6月、仙石原の貸別荘に逗留した際、近くにローソン第3新東京市西店があり、家族で興奮しました。エヴァンゲリオン色は、さほどありませんでしたが、意味も無く毎日通いました。(写真出典:ja.wikipedia.org)

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