2021年12月14日火曜日

サグラダ・ファミリア

ガウディの逆さ吊り模型
2019年、永年、見たいと思っていたサグラダ・ファミリアを、じっくり見る機会がありました。2026年完成予定と発表されていたので、それを待つ手もあったのですが、私にとって、サグラダ・ファミリアは、永遠に未完というイメージが強く、あえて建設中を見に行ったわけです。ところが、コロナ・ウィルスのパンデミックの影響で、観光客が激減し、2026年完成は難しくなったようです。そこで、持てる資金と労働力のすべてを、マリアの塔建設につぎ込み、この12月9日に完成を見たようです。

138mのマリアの塔は、完成時、18基となる塔のなかで、2番目に高い塔です。ちなみに、完成時、最も高い塔になるのは、イエスの塔であり、170mとなります。マリアの塔完成以前のサグラダ・ファミリアの倍の高さになります。サグラダ・ファミリアは、1882年3月に着工されています。着工直後、辞任したフランシスコ・ビリャールから設計を引き継いだのがアントニ・ガウディでした。当時、ガウディは31歳、その異才ぶりは知られつつあったものの、まだキャリアをスタートしたばかりであり、サグラダ・ファミリアは初めて手がける大型建築でした。サグラダ・ファミリアの正式名称は、聖家族贖罪教会です。贖罪とは信者の寄付行為を表し、教会は寄付を財源に建設されることを意味します。ガウディの壮大な建築を賄うほどの寄付は、なかなか集まらず、建設は、なかなか進みませんでした。

晩年をサグラダ・ファミリア建設に捧げたガウディですが、1926年、躓いて転んだところを、路面電車に轢かれて死亡しました。ガウディの死後も建設は継続されますが、スペイン内戦時、設計図などが焼失します。ただ、残された少ない資料に基づき、建設は継続されてきました。ガウディの建築は、しばしば生物的と言われます。直線の少ない建築は、可能な限り自然を模倣しているように思えます。建築としての構造計算も、極めて独創的な方法で行われていました。フニクラー、逆さ吊り模型と呼ばれる方法ですが、重りをつけた紐を複雑に組み合わせてバランスを取り、それをひっくり返すと構造力学に適った建築になるというものです。何やら中世的な手法のようにも思えますが、科学的合理性があるようです。ガウディの独特な建築が成立する大きな要因になっているようです。フニクラーは、サグラダ・ファミリアの地下で見ることができます。

バルセロナとその近郊で、ガウディの作品6点を観ることが出来ました。サグラダ・ファミリア以外で印象に残ったのは、まるで精巧な工芸品を思わせるグエル邸、ガウディらしさと近代住宅としての合理性をギリギリ詰めたカサ・ミラ、そして未完に終わったコロニア・グエル教会地下聖堂です。コロニア・グエルは、ガウディのパトロンだった繊維会社の経営者グエルが、バルセロナ郊外に建設した工場とその労働者のための町です。グエルが描いた理想の街です。その街の礼拝堂として建設されたのが教会地下聖堂です。半地下の礼拝堂は、開けた空間が4本の柱とアーチで支えられ、ガウディが設計した椅子も含めて、不思議な空間を構成しています。その構造設計は難しく、設計だけで10年を要したと言われます。上部構造は、今も未完のままとなっています。

コロニア・グエルの街が建設される少し前、バルセロナの街は、碁盤の目に区画され、高さや外観に統一性を持たせた労働者のための集合住宅が建設されています。バルセロナは、産業革命とともに急速に栄えた街です。工場労働者を多く集めるために、理想的な住環境を作ることに熱心だったわけです。そしてガウディの建築や公園、さらにはムンタネーのカタルーニャ音楽堂、サン・パウ病院等も含め、当時のバルセロナは、世界最先端の”未来都市”だったのでしょう。(写真出典:4travel.jp)

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