笹川流れ |
以来、お気に入りで、何にでもこの藻塩を使っていました。残り少なくなり、取り寄せしようとしましたが、通販は行っていないようでした。ならば製造元の塩を探そうと、日本海、藻塩、で検索してみたところ、すぐに見つかりました。商品名こそ違うものの、ラベルの意匠がまったく同じものがあったのです。商品は、新潟県村上市の笹川流れで作られた「玉藻塩」でした。笹川流れは、日本海に面して奇岩・絶壁が連なる海岸線です。やや変わった名称ですが、その由来は、岩の間をダイナミックに流れる潮流が見られることから来ているようです。船に乗って観光するわけですが、なかなか見事な景観です。それにしても、新潟に赴任し、村上市にも毎月行っていたにも関わらず、こんな美味しい塩を知らなかったとは驚きです。
言うまでも無く、人間が生きるために、塩は不可欠です。古来、海水製塩や岩塩採掘は重要な産業であり、塩は重要な交易品でした。よって塩の専売制は、世界各国で古くから存在しました。江戸期の日本でも、各藩が専売制を敷いていました。明治になると、外国から、安くて質の良い塩が入り始めます。これに危機感を抱いた明治政府は、1905年から、塩の専売制を始めます。専売制のもとで、製塩の工業化が進み、1970年頃からはイオン膜を使った装置産業へと変わりました。サラサラとした「食塩」の誕生です。いわば化学的に作られた塩であり、純度は高いものの、ミネラル分が出すうま味に欠けるわけです。そこで、従来、専売公社に塩を納めてきた業者等が中心となって、自然塩復活の動きが起こります。
1997年に至り、100年近く行われてきた塩の専売制は廃止されます。それ以降、伝統的な製法で作られた各地の塩が販売されるようになりました。日本の製塩法には、入浜式や流下式などありますが、古代における製塩法は、乾燥したホンダワラ等の海藻についた塩、あるいは海藻を燃やして得た灰から鹹水を作り、煮詰めていく方法です。こうして作られたのが、いわゆる藻塩です。海水のミネラル分、海藻のうま味成分が豊富に含まれ、まろやかで、やさしい塩です。また、うま味が強いので、ナトリウムの取り過ぎを防ぐことにもなります。塩は、料理に応じて使い分けるものなのでしょうが、私は、味付け用の塩としては、やたらと藻塩を使っています。
塩の自由化とともに、塩の多様化も進みました。海外からも特色ある塩が入ってきます。同時に、料理における塩の使い方も変化してきました。分かりやすいところで言えば、ステーキや刺身も塩で食べるスタイルが出来ました。また、低温調理の白色系を中心に、とんかつも塩で食べることが増えました。確かに、うまいとんかつはわさびと塩で食べると、肉の味が引き立ちます。ただ、個人的には、とんかつは、やはりソースと辛子だろうと思っています。(写真出典:nikkei.jp)