2021年11月18日木曜日

なんでも鑑定団

テレビ東京の人気番組「開運!なんでも鑑定団」は、1994年から続く長寿番組です。英国のBBCが、1979年から放送する”Antiques Roadshow”が原型と言われます。BBCの番組は、今も継続していますが、鑑定士が地方を訪れ、住民が持ち込んだ品々を鑑定します。また、アメリカやカナダにも、なんでも鑑定団と同様、”Antiques Roadshow”を原型とする番組が存在するようです。何度か”Antiques Roadshow”を見たことがありますが、まさに好事家による好事家のための番組です。一方、なんでも鑑定団は、バラエティ番組としての構図を基本とし、作品や作家に関する情報提供も行うなど、より多くの視聴者をターゲットに制作されています。

なんでも鑑定団は、バラエティ番組らしく、司会者に芸能人や芸人を使っています。さらに、鑑定を依頼する出演者から、古美術品・骨董品の入手経緯、あるいは、その人の人生や家族の歴史を聞き出し、視聴者に親しみを持たせるとともに、様々な人生を垣間見せてくれます。番組としては、登場する骨董品以上に、これが重要な要素かも知れません。また、旧家や大金持ちが、偉そうに持ち込んだ古美術が、実は偽物だったというケースも多くあります。これなどは、ある意味、一般人が「ざま見ろ」とばかりに溜飲を下げる場面でもあり、番組の隠れた狙いなのではないかとさえ思います。番組に登場することは、大恥をかく恐れもあるわけです。

さすがに、一級の古美術・骨董愛好家などは参加しないと思われます。番組に参加をするのは、さほど興味はないものの古美術品を相続した人、そしてちょっとした骨董好きの皆さんが大半です。数年前、流通センターで行われたラルフ・ローレンのファミリー・セールへ行った際、ちょうど骨董市が開かれており、冷やかしに覗いたことがあります。人でごった返す広い会場に、数百万円の古美術品を商う店から、ガラクタ専門の類いまで、二百軒を超す骨董商がひしめき合っていました。私も、嫌いな方ではないので、結局、隅々まで見てしまいました。会場で配布されていた資料に、東京で開かれる骨董市の日程がありました。骨董市が、方々で、しょっちゅう開催されていることを知り、驚きました。なんでも鑑定団の人気が衰えないわけです。

骨董を投資対象とし、その価値を楽しむ人々もいますが、そういった人たちは、骨董というよりも古美術愛好家なのだろうと思います。多くの骨董好きは、古い品を観賞して楽しむ人たちだと思います。なかには、コレクションという病を患う人もいますが、ほとんどは雑多な骨董品を楽しんでいるのだろうと思います。骨董品の魅力は、懐古趣味はもちろんのこと、民芸同様、簡素で飾らない用の持つ美しさ、あるいはその風情にあるのだろうと思います。加えて、大事な要素は、その人なりの「発掘」の楽しさなのだろうと思います。つまり、思い入れの世界です。そういう意味では、古美術以外は鑑定など無用であり、自慢したいだけで参加する人も多いのでしょう。

昔、エジプトのカイロで、常設の骨董市のようなところへ行ったことがあります。薄暗く、広い店内に、雑多に古いものが積んでありました。魔除けらしき翼のある蛇の木彫りが目に付き、買うことにしました。これは150年位前のもので、アンティークではないが、いいのか、と骨董商に念押しされました。150年前なら、日本では立派に骨董品です。さすがエジプトと感心してしまいました。ちなみに、1934年に、アメリカの関税法が、100年を超えた工芸品や美術品をアンティークとすると定義をしたことから、世界的には、100年が一つの目安になっているようです。(写真出典:tv-tokyo.co.jp)

マクア渓谷