2021年11月9日火曜日

Airbnb

 NYにいた頃、近所の日本人から、家族旅行の際、小さな炊飯ジャーを持参し、ホテルやモーテルでご飯を炊いて食べている、と聞きました。子供が小さいと、旅先での食事は、ファスト・フード、テイクアウト、ルーム・サーヴィス等に限られます。これは良いことを聞いたと思い、早速、我が家も取り入れました。さらに、その後は、小さなキッチン、キチネット付きのホテルを選んで泊まるようになりました。そして、アパートや家をレンタルするスタイルに行き着きます。今で言う”Airbnb”ということになります。

欧州では、結構、前からレンタル・アパートの仕組みがありました。様々な国の業者がやっていましたが、ここ10年は、完全にAirbnbが独占しています。我が家にとってレンタルすることのメリットは、人数割りすればホテルよりも広くて安価な宿を確保できる、旅の計画に最適なロケーションを選択できる、外食を減らして食費を抑えられる、手軽に洗濯もできる、近所の店での食材探しや食事等ローカルに暮らす感覚を楽しめる、そして何より、気楽に、勝手に、ストレス少なく過ごすことが出来る、といったところでしょうか。

加えて、Airbnbになってからは、物件探しの際、写真や利用者の口コミなど多くの情報が参照できます。支払いも、Airbnbを通じて、簡単かつ安全にできます。また、事前に貸主とメールできるので、鍵の受取や返却、質問や要望といったコミュニケーションも簡単にできます。Airbnbでは、貸主も借手も、事後に互いを評価し、サイトにアップします。貸主にとって、評価は、売り上げに直結する重要な要素です。結果、アパートは清潔で使い勝手が良くなり、貸主のホスピタリティーも高くなります。競争原理の導入で、品質の向上を実現しているわけです。

Airbnbは、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインの卒業生二人が、2008年にサンフランシスコで立ち上げています。基本的な構造は、貸手と借手を結ぶプラットフォームを提供するというビジネスです。典型的なシェアリング・エコノミーであり、その代表格と言えます。こうしたビジネスでは、選択できる物件の豊富さが鍵になります。Airbnbは、簡便な操作性のみならず、個々の物件に関する豊富な情報、充実したセキュリティ等を特徴にして、借手を増やし、結果、貸手も増やしていきました。さらに欧州等では、従前から同様のビジネスを行っていた業者を買収するなどして、世界中に対象地域を広げました。2014年には、日本にも進出しています。

Airbnbは、ホテル業界にとって大きな脅威です。ただ、宿泊紹介業界では、ブッキング・ドットコムに次ぐ2位となっており、利用目的による棲み分けが存在すると思われます。また、住宅価格の高騰や近隣住民への迷惑等の観点から、貸出日数の制限といった規制も行われています。CtoCという新しい経済は、一定の広がりを見せ、既存ビジネスを浸食しますが、完全なテイクオーバーまで行くことはないと考えます。ちなみに、Airbnbも、コロナ・ウィルスのパンデミックで打撃を受けました。キャンセルに関しては、Airbnbが、総額300億円近くを補填し、またレイオフも、増資も行っています。とは言え、大都市以外での利用は増えたようです。今年、我が家も箱根で2度利用しました。コロナ収束後、Airbnbは、再び勢いを増していくのでしょう。(写真出典:news.airbnb.com)

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