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14K創始者葛肇煌 |
工藤会は、中国から押し寄せる蛇頭や三合会と水際で戦い、その浸透を防いでいるというのです。もちろん、事の真偽はわかりません。ただ、ありそうな話だと思えるほど、中国犯罪組織による日本への浸透が進んでいたわけです。蛇頭は、日本のやくざのような犯罪組織と思われがちですが、実態は、世界中に広がる密入国ブローカー組織です。蛇は、頭だけを出して水の中を泳ぐことから、そう呼ばれるようです。コンテナにギュウギュウ詰めにされた密入国者たちが、命を落とすケースが、欧米でも散発していました。一方、三合会は、香港に拠点を持つ複数のやくざ組織の総称です。
三合会の起源は、19世紀、清朝末期の中国各地に起こった洪門という秘密結社にあります。洪門は、満州人が建てた清朝に対する漢民族による武力抵抗組織です。“反清復明”を掲げ、起源は鄭成功まで遡るとも言われます。太平天国の乱、辛亥革命でも大きな役割を果たしています。孫文も、洪門のメンバーであったことはよく知られています。国共内戦で共産党が勝利すると、洪門の一部は、香港へと移り、三合会が生まれます。三合とは、天地人を表し、その調和を目指す組織とされます。武力闘争のための資金調達から始まり、次第に黒社会に根を張っていったのでしょう。
三合会は、世界中の華僑社会に拠点を持ち、中国人がいれば三合会もいる、と言われるほどでした。最大組織と言われる“14K”は、世界最大の犯罪組織とも呼ばれていました。三合会は非合法組織であり、構成員であることが分かれば、即刻逮捕されます。それゆえに地下に深く潜り活動していると言われます。ただ、鄧小平はじめ中国要人が、三合会を許容するような発言も行ってきました。香港で民主化運動が激しさを増すと、反動的な愛国者グループがデモを襲う光景をよく見かけます。おそらく当局と結託した三合会なのだろうと想像できます。政治と裏社会の微妙な関係は、世界中に存在します。日本も同様ですが、特に戦前は、なかば公然たる関係でもありました。
ちなみに、三合会の最大組織14Kの誕生に関しては、旧日本軍が関わっているという話があります。日中戦争のおり、陸軍の広東特務機関は、三合会の影響力の大きさを知り、ダミーの犯罪組織を作って内部情報の収集にあたったそうです。敗戦後、国民党軍の葛肇煌が、その組織を接収し、後の14Kがスタートしたと言われます。歌舞伎町は三合会が支配している、と言われはじめてから、随分になります。今般、工藤会トップに下された極刑、あるいは暴力団排除条例等は、法学的に疑問がないわけではありませんが、反社勢力に対する国の厳しい姿勢を感じさせます。日本の反社勢力が弱体化することは好ましいのですが、そこで生まれる空白を三合会等が埋める懸念もあります。司法当局には、そのあたりへの目配せもお願いしたいところです。(写真出典:hkcd.com)