2021年8月7日土曜日

聖母出現

無宗教の人間にとって、キリスト教の奇跡は、理解しにくい面があり、それだけに興味津々でもあります。イエス・キリストが成した数々の奇跡は別として、ローマ教皇庁成立以降の奇跡は、ヴァチカンが厳密に査定し、なかなか認定されないものだそうです。認定された奇跡には、聖母マリアの出現が多いと聞きます。多くの聖母出現が記録されていますが、三大奇跡とも呼ばれるのが、フランスの”ルルドの聖母”、ポルトガルの”ファティマの聖母”、メキシコの”グアダルーペの聖母”です。

認定された奇跡に聖母出現が多いのは、キリスト教において、聖母マリアは、天に上げられただけで、死んでいないという解釈があるからだと聞きます。カソリックにおいて、人々は生まれた時から原罪を背負っているとされます。原罪は、アダムによる神への不従順という罪に起因しています。それを救済できるのはキリストだけです。ただ、聖母マリアは、神の恵みによって初めから原罪を免れており、よって老いることも、死ぬこともない、とされます。従って、聖母が天から降りてくることも、若いままの姿で現れることも、一概に否定することはできません。

ルルドの聖母は、1858年、フランスの南端の町で、14歳の少女の前に、18回に渡って姿を現しています。聖母が指した洞窟の中の泉の水が、不治の病を癒すとされ、世界中から巡礼者が集まります。これまでに説明不可能な治癒が2,500例、うち奇跡と認定されたのは68例あります。1916年には、ポルトガル中部ファティマで、3人の子供の前に、天使が現れ、聖母の出現を予告します。予告どおり、聖母は、毎月13日、半年に渡って出現しています。地獄の実在、第一次大戦収束とさらなる大戦の勃発、教皇暗殺の懸念が予言されます。ただし、教皇暗殺の予言に関しては、永らく秘匿され、まだすべては公開されていません。また、ロシアが世界にもたらす厄災を回避すべく祈りなさいとも告げます。1年後、ロシアの十月革命が起こり、宗教を全否定する共産党独裁国家が生まれ、かつ80年後に崩壊しています。

ファティマの聖母が、最後に出現した時、噂を聞きつけた民衆が7万人が集まり、太陽が狂ったように動く”太陽のダンス”という現象を目撃しています。マス・ヒステリアとしては、規模が大き過ぎる不思議な現象です。もっと不思議なのは、1531年のグアダルーペの聖母出現だと言えます。聖母出現の中では、極めて稀な物証が残っています。農夫の前に4回目に現れた時、聖母は、出現の証として、花を摘み、司教に届けるように言います。農夫は、冬なのに現れた花を自分のマントに包み、司教に届けます。するとマントに聖母像が浮かび上がっていました。そのマントは、今もグアダルーペ聖堂に掲げられています。不思議なことに、五百年経て、なお色鮮やかだと言います。科学的な分析は、限定的に行われたことがあるようですが、本格的な調査は行われていません。

グアダルーペの聖母像は、中南米のキリスト教化に大いに貢献し、永年、中南米における信仰の象徴となってきたため、今更下手なことはできないのでしょう。熱狂的な宗教心、あるいは厳しい修行のなかで幻視が起きることは理解できます。ただ、それを、単なる幻視と片付けられない現象があるのも事実なのでしょう。グアダルーペの聖母像に関して、教会は、むしろ積極的に科学的分析を行い、科学では説明できない部分があることを明らかにすべきではないかと思います。(写真:グアダラルーペの聖母像 出典:ja.wikipedia.org) 

マクア渓谷