雷の語源は、”神鳴り”だとされています。神の御業と思って当然だと思います。雷は、稲妻とも呼ばれます。昔、 夫も妻も「つま」と呼んでいたようです。稲の出穂期に雷が多いことから、雷は稲を妊娠させる夫に見立てられたようです。出穂の時期、稲は、日光と水分を豊富にとる必要があります。雷発生のメカニズムは、地表が日光で温められて水蒸気が発生し、それが上昇気流となり積乱雲が発生、そして雷雨になります。要するに、この時期の雷は、稲の出穂に必要な気候の全てを象徴しているわけです。稲妻という言葉は、単なる見立てだけではなく、結構、科学的だということになります。
さらに「一光一寸(ひとひかりいっすん)」と言う言葉もあります。つまり、出穂の時期、稲妻が光ると、稲は一寸伸びるというわけです。この言葉は、単に気象条件が揃ったということに留まらず、稲の成長に関わる栄養素の話だという説があります。植物の成長には、窒素、リン酸、カリウムが必要となります。農薬の基本成分ということでもあります。窒素は、空気中に多く含まれ、空気の8割が窒素と聞きます。雷の放電現象は、空気中の窒素と酸素を結合させ、窒素酸化物を作ります。これが雨に溶けて降り注ぐわけです。いわば雷雲は、肥料の生産工場だということになります。
水田では、稲に酸素を供給するために、一定程度の水を流し続けているものだそうです。ただ、雷雨が降り、それが止んだ後は、しばらく水の流れを止め、窒素酸化物を十分に稲に取り込ませると聞きます。稲作を初めて三千年。その蓄積されたノウハウには、頭が下がります。(写真出典:news.livedoor.com)