2021年7月11日日曜日

博多天ぷら

天麩羅処ひらお本店
博多への出張は、いつもアドレナリンが出ます。街も、街の人たちも、明るく元気があるので、こっちまでワクワクしていまいます。博多らしさが爆発するのは、やはり夜です。中州のネオン、立ち並ぶ屋台は、博多の真髄なのでしょう。そして、多様な博多グルメこそ、最大の楽しみです。うどん、ラーメン、水炊き、もつ鍋、呼子のイカ、ごまさば、明太子、鶏皮、鉄鍋餃子、まだまだありますが、忘れてはいけないのが”博多天ぷら”です。出張した際には、可能な限り、”ひらお”で天ぷら定食を食べていました。 

博多天ぷらが、東京の天ぷらと異なる点は、3つあると思います。まずは、揚げ出しスタイルです。例えば、”ひらお”は、全席カウンターになっており、揚げたての天ぷらを一品づつ提供してくれます。やはり天ぷらは、揚げたてが美味しいわけです。東京でも、高級店のカウンターに座れば、同じことなのですが、値段が違いすぎます。二つ目は、肉類の天ぷらです。最近、東京でも見かけるようになりましたが、伝統的には肉類の天ぷら等は外道です。とり天はうまいに決まっていますが、薄切りの豚や牛も、なかなかのものです。三つ目は、食べ放題のおかずです。”ひらお”の場合、絶品の塩辛、もやしのナムル、大根のきんぴらの三種です。明太子のやまやが経営する”やまみ”では、定番の塩辛に加え、明太子も食べ放題です。

博多天ぷらの歴史は、いま一つはっきりしないのですが、皆さんの話からすれば、どうも”ひらお”が始めたスタイルが広がっていったようです。”ひらお”は、1977年、まだ田んぼが広がる東平尾に野菜・精肉・鮮魚を同時に扱う河内商店としてオープンします。翌年、隣に”ドライブインひらお”を開きます。先代が、仕事もせず、プラプラしていた近所の若者たちの勤め口として、そして手に職を付けさせるためにオープンしたと言います。そこで評判の良かった天ぷらを専門にしたのが79年。それ以降、博多天ぷらスタイルを貫いているようです。本店は、いまでも福岡空港近くの東平尾にあり、四六時中、混雑しています。私は、天神の店へ行きますが、前の店も、移転後の店も、いつも大行列です。ただ、とても回転が速いので、並ぶ価値はあります。

博多天ぷらの魅力の一つは価格です。”ひらお”の揚げ出しの天ぷら定食が7~8百円というのは驚きです。博多の食べ物が安くておいしい理由は、食材の豊かさにあります。甘味の強い魚介類は目の前の玄界灘から、野菜類も、近隣から豊富に供給されます。近年、博多天ぷらの東京進出も増えています。前述の”やまみ”もそうですが、価格も、結構、がんばっています。さらに、日本橋の天丼の名店金子半之助も、博多天ぷらスタイルの「天ぷらめし金子半之助」を開くなど、広がりを見せています。たまに日本橋の”天ぷらめし”に行きますが、相も変わらず長蛇の列です。ただ、ここも回転が速いので、一回転待つくらいの列なら、さほど時間はかかりません。名物である卵の天ぷらをご飯に乗せて食べれば、結構、幸せになれます。

寿司屋は高級店と回転寿司に、 蕎麦屋も高級店と立ち食いに二極化していますが、天ぷらは、 やや微妙です。 天ぷら自体は庶民的な惣菜ですが、 天ぷら屋は高級なものになりました。江戸の名物、寿司・蕎麦・天ぷらは、もともと屋台の食文化です。時代が変わっても、この三品は庶民の味方であってほしいと思います。そういう意味では、博多天ぷらの江戸での頑張りを応援したいものです。(写真出典:fukuoka.bocco.com)

マクア渓谷