2021年4月17日土曜日

朝食バイキング

城山ホテルの朝食
旅の楽しみの一つは、朝食だと思います。行き届いた味とサービスは、ホテルや宿によって特色があり、結構楽しめます。最近は、バッフェ、いわゆるバイキングが、ホテルに限らず、温泉宿でも主流になっています。ホテル側としては、食材や人件費の節約になり、最後に受けたサービスの印象が最も強く残るというピークエンド法則を重視し、チェックアウト前の朝食を充実させる傾向もあるようです。ランキングも多くみかけますが、今一つ、納得感がありません。宿泊施設というアクセス上の制約から、網羅性に欠けるからなのでしょう。

日本におけるバッフェ料理は、1958年の帝国ホテルに始まります。新館オープンにあわせて、新しいレストランを模索していた当時の社長が、北欧で”スモーガスボード”に出会ったことがきっかけとなりました。日本人にも親しみが持てるネーミングを、ということで、北欧と当時ヒットした”バイキング”という映画をかけて”バイキング”という名称が誕生しました。ネーミングの良さもあり、バイキングは、瞬く間に大ヒットとなり、日本中に広がっていったようです。ちなみに、赤坂には、日本唯一の本格的スモーガスボードの店「ストックホルム」があります。かつては、六本木のスウェーデン大使館の地下にありました。六本木ヒルズ開発とともに、赤坂に移転しました。ちなみに、昔の「ストックホルム」は、大好きな空間でした。今でも、個人的にはナンバーワンです。

そのバイキングが、ホテルの朝食として提供されたのは、いつ、どこから始まったのかは、どうもはっきりしません。昔から有名だったのは、鹿児島の城山ホテル(旧城山観光ホテル)だったと記憶します。元祖ではないかもしれませんが、かつては最強の朝食と言われていました。とにかく品数が多く、常時、和洋中60種以上が並ぶという光景は圧巻でした。すべてを食べることなど、到底できません。しかも、とても美味しく、かつ鹿児島の名産・名物も網羅していました。城山ホテルは、20年ほど前に、温泉を掘り、桜島を真正面から望む露天風呂を作りました。日本有数とも言える絶景の風呂です。噴煙たなびく桜島を眺めながら朝風呂に浸かり、日本一の朝食を食べるという、なんとも贅沢な朝が過ごせます。

北海道の朝食バイキングに革命を引き起こしたのは、2008年開業のラビスタ函館ベイでした。企業の社員食堂の受託から創業した共立メンテナンスが、ドーミー・インの経営ノウハウを活かして開業したシティ・ホテルです。赤レンガの倉庫街に立地し、大正ロマンをテーマとした部屋、屋上にある展望温泉も魅力ですが、なんといっても朝食バイキングが話題になりました。北海道の海鮮がビッシリ並び、イクラも含めて、自分で海鮮丼が作れるというバイキングは衝撃的でした。なかなか宿泊の予約がとれず、宿泊できても朝食には長蛇の列という状況が続きました。極端に言えば、函館名物朝市へ朝食を食べに行く必要がなくなったわけです。いまや北海道のホテルでは、ラビスタ方式がスタンダード化し、全国各地でも、郷土料理をバイキングの目玉に据えるホテルが増えたように思います。

私のベストの朝食バイキングは?と聞かれると、すぐに十余りのホテルの名が浮かびますが、優劣をつけるのは難しいところです。一番多く食べたのは、京都ホテルオークラだと思いますが、ここの朝食バイキングも大好きでした。一品一品が美味しく、季節メニューも楽しみでした。特に、ぐじ(甘鯛)の季節には、カマの塩焼きが限定で並び、これが絶品でした。ただ、バイキングに限定しないホテルや宿の朝食としては、山中温泉「かよう亭」が一番良かったと思います。日本一とまで言われた朝食は、実に2時間かかりました。随分と時間がかかったのは、あまりにも美味しい料理の数々に、日本酒を注文せざるを得なかったからでもありますが。(写真出典:ana.co.jp)

マクア渓谷