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Union Oyster House |
ユニオン・オイスター・ハウスは、ケネディ家はじめ、ニューイングランドの著名人御用達の店でもあります。ジョン・F・ケネディがお気に入りだった席は、ケネディ・ブースと呼ばれています。名物料理は、生ガキや生クラム、そしてロブスターといったシー・フードですが、ステーキやチキンもあります。日本では珍しい生のクラムは、チェリー・ストーンと呼ばれ、最近千葉で有名になっているホンビノス貝の一種らしいです。ユニオン・オイスター・ハウスで、是非とも食べるべきものの一つが、クラム・チャウダーです。もちろん、ニュー・イングランド・スタイルの白いチャウダーですが、サラサラとしたスープにクラムの風味が効いています。とろみは、砕いたオイスター・クラッカーでつけるのがニュー・イングランドの伝統だと言われます。
クラム・チャウダーには、アメリカ各地に多くのスタイルがありますが、最も有名なのは、ミルク・ベースの白いニュー・イングランド風、トマト・ベースの赤いマンハッタン風、そして透明なスープに青い野菜が添えられたロード・アイランド風です。クラム・チャウダーは、フランス人、あるいはノバスコシア人がボストンに持ち込んだ料理と言われます。チャウダーは、フランス語の大釜が語源ともいわれます。昔のチャウダーの姿に一番近いのは、アメリカ版アサリの潮汁といった風情のロード・アイランド・スタイルのようです。ミルクを使うニュー・イングランド・スタイルは、海のものが苦手なアメリカ人のために、後に考案されたものだとも言われています。
実は、ニュー・イングランド・クラム・チャウダーは、意外と簡単な料理です。バター、小麦粉、ミルクと聞けば、いかにも面倒くさそうですが、アメリカ人が作るのですから、意外とシンプルです。要は、ベシャメル・ソースを作るわけではなく、賽の目に刻んだジャガイモ、玉ねぎ、セロリを炒める際に、小麦粉をふりかけ、最後にミルクを加えるだけです。恐らく最大のポイントは、新鮮なアサリをたっぷり使うことだと思います。その点、アサリのうま味が半端ないのは、ロング・アイランドのフリー・ポートのチャウダーです。器の半分がアサリというすごさ。ただ、砂抜きがいい加減で、結構、ジャリジャリとした食感になります。砂抜きは、しっかりやりましょう。
アメリカでは、南部の一部を除き、これといった郷土料理はありません。南部を代表する料理と言えば、ケイジャン料理があります。ケイジャンは、北東部のアカディアからイギリス軍によって追い出されたフランス系移民です。クラム・チャウダーといい、ケイジャンといい、アメリカの名物料理は、イギリス系ではなく、フランス系によって持ち込まれたものばかりというわけです。やはりそうかと思ってしまいます。(写真出典:airfrance.com)