2021年3月16日火曜日

大天使ガブリエル

フラ・アンジェリコ「受胎告知」
アブラハムの宗教とも呼ばれる三大一神教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教には、神の使いとしての天使が存在し、共有されています。神が姿を現すことのない三大一神教では、人間との中継役が必要だったのでしょう。天使にも階級が存在します。9階層の一番下が”天使”であり、その上が”大天使”となります。ミカエル、ガブリエル、ラファエルは、三大大天使とも言われ、よく名前が知られています。ミカエルは天使軍を率い、ラファエルは守護天使を監督します。そして、最も興味深いと思うのは、神の言葉を伝えるガブリエルです。

大天使ガブリエルは、預言者モーゼの死を看取り、また、旧約聖書によれば、預言者ダニエルに対して、ペルシア王キュロス2世の即位、キュロス2世によるバビロン捕囚の終わり、エルサレム神殿の再建を伝え、終末思想について語っています。ユダヤ人とユダヤ教にとって、極めて重要な事柄を伝えているわけです。新約聖書になると、聖母マリアにイエス・キリストの受胎を伝えます。いわゆる受胎告知です。ダ・ヴィンチやフラ・アンジェリコ等の絵では、ガブリエルの見事な翼が描かれています。イスラム教では、預言者ムハンマドに神の言葉「クルアーン」を伝え、バドルの戦いでは、圧倒的に不利だったムハンマドを助け、勝利に導いています。

ガブリエルが初めて登場した旧約聖書は、ユダヤ人のバビロン捕囚時代に書かれたと言われます。20万人が、約50年間に渡ってバビロンへの移住を強いられました。アイデンティティの危機に陥ったユダヤ人は、民族の誇りと団結を維持するために、旧約聖書を書いたのでしょう。とは言え、そこには、バビロン文化の影響が色濃く反映されているようです。大天使ガブリエルも、その一つだと言われます。ガブリエルのモデルについては、諸説あるようですが、3,600とされるシュメールの神々の一つではないかとも言われます。シュメール文明は、紀元前6世紀から3世紀にかけて存在した文明であり、世界最古の文明と言われます。シュメールは、周辺に勃興したセム族系の国々に滅ぼされますが、その高い文明は継承されていきます。

シュメールは、現代と同程度といわれる高い農業生産性を背景に、高い文明を築きました。文字、文字、法令、宗教、灌漑技術、天文学、数学、合金、医術等において、画期的とも、突発的とも言える発展を見せます。シュメールの60進法は、今も60分という時間の単位等に残り、小数点も計算に使っていたようです。また、地軸のブレによる影響まで、ほぼ正確に把握していたとされます。紀元前2600年頃の王が残した”ギルガメッシュ叙事詩”には、大洪水の記載があり、氷河期の終わりに起きた大洪水を指すと言われます。それは、ほぼ同様の内容で、旧約聖書のノアの箱舟へと継承されています。神々に替わって人間を創造したとされる知恵の神エンキは、ある忠実な神官に対し”大洪水に備えよ”と伝えたとされます。このエンキこそ、大天使ガブリエルのモデルなのではないか、と思います。

シュメール人の民族系統は不明だと言われます。加えて、突然のように発生した高い文明からして、シュメール人は宇宙人だったのではないかという説も大人気です。シュメール人は、自らを”ウンサンギガ”と呼んでいます。”黒い頭の人”、あるいは”混ざり合わされた人”という意味だそうです。ギルガメッシュ王は、自らを、2/3が神で、1/3が人間だと言っています。なぜ半々ではないのか不思議です。現在、人間は、母親から2系統のDNAを、父親から1系統のDNAを受け継ぐことが知られています。これを単なる偶然と言い切れるのか、と思ってしまいます。(写真出典:firenzeguide.net)

マクア渓谷