2021年2月28日日曜日

梁盤秘抄 #14 Blues Breakers with Eric Clapton

アルバム名: Blues Breakers with Eric Clapton 1966               アーティスト名: John Mayall and the Bluesbreakers

中学生の頃、ジョン・メイオール・ファンクラブの会員番号が6番と若い番号であることを自慢していました。まぁ、会員数も少なかったのだとは思います。会員になって、得したことは、あまり無かったと思います。ただ、ローリング・ストーンズの「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」のテスト・プレス盤をもらったことは覚えています。いずれにしても、このアルバムに感動して、ファン・クラブに入会した次第です。もっとも、エリック・クラプトン・ファンクラブがあれば、明らかにそちらが優先されたと思います。時代は、ちょうど、ハード・ロック幕開けの頃でした。

ジョン・メイオールは、1962年、ブリティッシュ・ブルース黎明期に、ブルース・ブレイカーズを結成します。1965年には、エリック・クラプトンが、バンドのポップ化路線を嫌ってヤードバーズを脱退し、ブルース・ブレイカーズに参加します。ただ、クラプトンは、この1枚だけを残してブルース・ブレイカーズを去り、クリームを結成します。ジミ・ヘンドリックスとエリック・クラプトンがリードするハード・ロック時代の始まりでした。このアルバムは、クラプトンが、ストレートにブルース・ロックを演奏した貴重なアルバムであり、その後の演奏のベースとなるスタイルを確立した1枚だと思います。また、この録音でクラプトンが披露したギブソンのギター”レスポール”とオーバードライブをかけたマーシャルのアンプ”ブルースブレイカー”の組み合わせは、ハードロックのスタンダードになりました。

クラプトンもジミヘンも、この時代のギタリストは、皆、ヒューバート・サムリンの影響下にあります。ヒューバート・サムリンは、ハウリン・ウルフに見いだされ、彼のバンドには欠かせない存在となりました。ノビノビとしたプレイが、ロバート・ジョンソンのスタイルが定着していたブルース・ギターの世界に、よりメロディアスな新しい風を吹き込みました。抜群のテクニックということではなく、ハウリン・ウルフとの信頼関係をもとに、彼の個性を素直に出せていたのだと思います。ロックンロールに飽き足らない英国の若者たちが、サムリンのギターに魅せられ、ブルース・ロックが生まれます。ポップの世界では、ビートルズが世界を席捲していました。一方、ロンドンの片隅では、後のハード・ロックにつながるサウンドが産声をあげていたわけです。

収録曲は、メイオールのオリジナルよりも、ブルースのスターたちの曲が多くなっています。ロバート・ジョンソン、オーティス・ラッシュ、フレディ・キング、メンフィス・スリム等の曲が、ほぼ原曲に近い形で演奏されています。彼らへのリスペクトの深さを感じます。ただ、原曲とは、テイストが随分異なるサウンドになっています。目立つ違いは、少しモッチャリとしたビート、伸びのあるギター・フレーズ等ですが、要は、かなり白っぽくなっているわけです。これが、クラプトンの、そしてブルース・ロックのオリジナリティであり、アメリカ黒人のブルースとは明らかに異なるジャンルの誕生と言えます。

このアルバムが録音された年、ミケランジェロ・アントニー二監督が、ロンドンにロケをして「欲望(Blow-up)」を撮っています。作中、主人公が、クラブに迷い込むシーンがあり、そこで演奏していたのが、クラプトン脱退後のヤードバーズでした。アンプの調子の悪さに怒り狂ったジェフ・ベックがギターを叩き壊します。ジミー・ペイジがニヤリとしながら演奏を続ける姿が印象的でした。演奏していたのはポップな曲でしたが、ほどなく二人とも退団し、クラプトンと並んでハード・ロックをけん引していくことになります。この3人は、三大ギタリストと呼ばれます。正確には、英国の三大ギタリストと言うべきです。なにせ、その上にジミヘンがいるわけですから。(写真出典:en.wikipedia.org)

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