アルバム名:Congolese Funk, Afrobeat & Psychedelic Rumba 1969-1978 アーティスト名:Verckys & L'orchestre Veve
西アフリカを代表するポピュラー音楽と言えば、フェラ・クティのアフロ・ビートを別とすれば、ハイライフとルンバ・コンゴレーズといったところでしょうか。ハイライフは、第二次世界大戦後、ガーナで、上流階級用クラブのダンス音楽として始まったとされます。ビッグ・バンドから始まり、後にギター・バンドへと幅を広げます。軽やかなギター・アンサンブルに男性コーラスが特徴的です。ハイライフは、近隣諸国にも広がり、西アフリカのポップの主流となり、ルンバ・コンゴレーズやアフロ・ビートにも影響を与えました。ルンバ・コンゴレーズは、ギタリストのフランコが、キューバのソンをベースとしたコンゴのダンス音楽スークースとジャズを融合して生み出したとされます。ソンは、世界的にルンバと呼ばれますが、英語のSong との混同を避けるために命名されました。キューバのソンは、ジャズやサンバと同じく、西アフリカ音楽とヨーロッパ音楽の出会いによって生まれました。コール&レスポンスやダンス・パートの存在が特徴と言われますが、様々なスタイルがあります。いずれにしても、西アフリカの音楽が、キューバへ渡り、そしてヨーロッパ経由で、コンゴに先祖帰りしたわけです。
1960年、ベルギーから独立したコンゴ共和国は、その後、ザイール共和国、そして現在はコンゴ民主共和国と国名を変えています。独立直後から、ベルギーが介入した内乱、いわゆるコンゴ動乱がはじまります。65年にはモブツが大統領に就任、以降、32年間の独裁が始まります。60年代は、アフリカの時代と呼ばれ、多くの国が独立しました。政治的な混乱もありましたが、若い国は躍動感にあふれ、音楽も、また新しい世界を切り開いていました。フランコのルンバ・コンゴレーズも、その一つと言えます。そして70年代に入ると、新しいアメリカの文化が入ってきます。
フランコのバンドに在籍していたギタリスト、ヴェルキースは、古いルンバ・コンゴレーズに飽き足らず、独立して自らのバンド”Verckys & L'orchestre Veve”を結成します。ロックやファンクを取り入れた力強いサウンドを展開します。ジェームス・ブラウンも、ヴェルキースのサウンドに触発され、リミックスを作ったと言われます。本アルバムは、ヴェルキースの70年代ベストを集めたものです。同じ時期、ナイジェリアでは、フェラ・クティがアフロ・ビートを展開し始めていました。煮えたぎった鍋の蓋を開けたように、西アフリカのファンク・シーンが花開き、多くの才能が活躍しました。コンゴの首都である大都市キンシャサが、新しい音楽を生んだとも言えます。キンシャサは、アフリカのポップ音楽の中心地となっていきます。
「キンシャサの奇跡」とは、1974年、キンシャサで行われたヘヴィー級タイトル・マッチで、モハメッド・アリがジョージ・フォアマンをKOして成し遂げた奇跡の復活劇を指します。このタイトル戦に合わせて、ジェームス・ブラウンはじめアメリカの黒人音楽家たちによる「ザイール’74」というフェスがキンシャサで開催されています。その模様はドキュメンタリー映画「ソウル・パワー」(2008)で見ることができます。地元からは、フランコとタブー・レイ・ロシュローも登場しています。当時のキンシャサの様子も興味深く、ホテル前でハイライフを演奏するバンドがいい味を出していました。(写真出典:amazon.co.jp)