過日、友人と話していると、映画「猿の惑星」が話題に上り、あれは面白かったと言うのです。私は、能天気に「猿の惑星」が面白いなどと言われると、腹が立ちます。日本人を憎悪し、猿に見立てた代物など拒否すべきものでしかないと思うからです。1968年公開当時、そのことに言及しなかった日本のマスコミのあり様にも疑問を感じます。
原作者のピエール・ブールは、英領マラヤのゴム園で働いていましたが、第二次大戦が勃発すると、フランス軍に徴兵されます。本国フランスがナチスに侵攻され、親ナチスのヴィシー政権が誕生すると、脱走して反ナチスの自由フランス軍に参加します。その後について、本人が多くを語らないために、いくつかの説があるようです。ただ、どうも日本軍の捕虜になり、その後、日本軍からヴィシー政権側のフランス軍に引き渡され、そのまま終戦を迎えたか、終戦直前に脱走したのではないか、と言われています。
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現在も残るクウェー川鉄橋 |
1957年、巨匠デビット・リーン監督が、映画化し、アカデミー作品賞を受賞します。主題歌「クワイ河マーチ」も大ヒットしました。映画史に残る傑作ですが、日本を告発するという小説の意図とは異なるヒューマニズム大作となったことが、ピエール・ブールには不満でした。怒りが治まらないピエール・ブールは、それを小説「猿の惑星」(1963)にぶつけます。泰緬鉄道建設捕虜虐待事件では、ジュネーブ条約を批准していなかったとは言え、日本軍は批判されて当然です。ただ、大量死に関しては、コレラの突発的流行等も勘案され、判決が下されています。
その現場で、実際に死ぬ思いをしたピエール・ブールが、判決を不満に思い、映画が甘いと思う気持ちは分からぬではありません。しかし、いやしくも文筆活動を行うものが、他国民を”知能ある猿”呼ばわりすることなどありえません。あまりもに失礼な話であり、まさに喧嘩を売っているとしか言いようがありません。日本国憲法からして。「猿の惑星」の発禁などすべきではありません。ただ、日本のマスコミは、ピエール・ブールの意図するところを正しく、広く伝えるべきだと思います。いまだに映画「猿の惑星」をありがたがっている日本人は、まさに猿並みと言われてもいたしかたない、とさえ思います。(写真出典:4travel.jp)