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アナ雪ナナちゃん |
名駅にある名鉄百貨店は、1972年、若者をターゲットとするセブン館をオープンします。翌73年、1周年を記念して、何か百貨店とも関係するシンボルがほしいと考え、巨大なマネキンにたどり着きます。デザインは、スイスのシュレッピー社。硬質塩ビ樹脂製です。名前は公募され、セブン館にちなんで、ナナちゃんになったそうです。名鉄百貨店前のアーケイド内に立っており、外からは見えにくくなっています。マネキンとして服を着せるので、外ではなくアーケイド内に置いたのでしょう。結果、アーケイド内での存在感は圧倒的となり、良い効果を生んでいます。それも含め、ナナちゃんは、ほぼ現代アートだと言えます。
ナナちゃんの着る服の生地は、7人分に相当するそうです。その服は、マネキンだけにトレンディなものが多く、季節感もあります。これこそ、ナナちゃんが鮮度を保ってきた理由だと思います。夏には水着も浴衣も着ます。時代を反映してランニング・ウェアを着た時には、シューズもランニング用になっていました。ちなみに靴のサイズは90cmだそうです。ナナちゃんの服は、専属の女性2人だけで、制作と着せ替えを行ってるそうです。基本的にはマネキンですから、デパートのプロモーションがメインですが、服飾専門学校生や高校生にデザインを解放することもあり、交通安全等の公的キャンペーンとタイアップしたり、また有料で企業に貸し出すこともあるようです。このオープン・システムも鮮度を保つうえで効果的です。
名古屋人は、意外と、日本一、あるいは日本初が好きです。それは名古屋の近代史と関係しています。名古屋は、徳川家康が開き、江戸期は尾張徳川家の城下町として大いに栄えます。ただ、実に豊かな街ではありますが、政治経済の中心であったことはありません。名古屋は、商業資本を十分に蓄えていましたが、明治期の巨大な財閥は生まれていません。徳川ゆえ、薩長政府とのパイプが薄かったからなのでしょう。名古屋財界は、国の助けを借りず、何でも自前でやるしかありませんでした。結果、それが、世界に誇るものづくりの文化が生みました。そして、独自の文化を持ちつつも、よろず東京と比較したがり、日本一や日本初にこだわる名古屋人の気質にもつながったのでしょう。ナナちゃんも、その文脈のなかにあるように思います。
名古屋は排他的な街だとも言われます。確かに、そういう面はあります。ただ、それだけに、なかに入ると、とても居心地のいい街でもあります。夏の暑さ、冬の寒さが無ければ、老後、住みたいとさえ思いました。今も、名古屋に行く機会があれば、大喜びです。名駅に到着すると、まずはプラットホームの”住吉”できしめんをすすり、ナナちゃんを一目見て、名古屋に来たことを実感し、そのうえで、街に出ていくのが、私のルーティンです。(写真出典:nagoyanavi.jp)