2020年11月12日木曜日

USSモニター

アメリカの南北戦争は、産業革命に伴う技術革新が投入された最初の戦争だと言われます。例えば、銃の破壊力に革新をもたらしたミニエー銃、あるいはガトリング砲に代表される機関銃も、南北戦争で初めて実戦配備されています。ガトリング砲は、複数の銃身を回転させ、1分間に200発撃てる驚異の兵器でした。ちなみに、最新の多銃身機銃の一つがファランクスですが、1分間に4,500発撃てます。もはや発射音はブーンとしか聞こえません。南北戦争終結後、大量の中古武器が世界に流れ、日本では戊辰戦争で使われています。なかでも有名なのが、長岡藩のガトリング砲です。河合継之助が購入し、自らも北越戦争で撃っています。

技術革新は、海軍でも起こりました。世界初の装甲船や潜水艦が実戦に投入されています。北軍のUSSモニターは、実戦投入された初の鉄製軍船、かつスクリューを装備した初の軍船です。USSモニターは、河川での戦闘を想定し、喫水線を水面スレスレにした半潜水艦で、砲撃による被害を抑えるために甲板の上には砲台くらいしかありません。南軍のCSSヴァージニアと戦ったハンプトン・ローズ海戦は、世界初の装甲艦同士の海戦と言われます。

CSSヴァージニアは木造船ですが、甲板の上は鉄製の装甲で覆われています。砲弾を弾くために角度をつけ、かつ鉄で覆った砲郭が甲板の大部分を占めています。USSモニター同様、喫水線はほぼ水面という半潜水艦となっています。奇しくも米国海軍の最新鋭ステルス駆逐艦ズムウォルトによく似た形状です。1862年のハンプトン・ローズ海戦における両艦の勝負は決着がつきませんでした。ただ、世界中が装甲艦の威力に目を見張ったと言います。以降、各国の軍船は、木造船から鉄製船に替わっていきました。

潜水艦については、南軍のハンリー潜水艇が、実戦投入されています。世界で初めて単独で敵艦を沈没させた潜水艦とされています。士官1名と水兵7名が乗り組み、手回しプロペラで推進しました。1864年、チャールストン外港で北軍の軍船を、外付けの水雷で攻撃、撃沈させました。ただ、水雷が爆発した時、敵艦から十分な距離を取れておらず、衝撃で乗員全員が死亡したようです。なお、ハンリー以前に実戦投入されたのが、独立戦争時、米国側が使った一人乗りのタートル潜水艇です。残念ながら、実用的ではなく、戦果もなく、その存在を疑う声もあるようです。

実は、世界で初めて実戦投入された潜水艦は、大坂冬の陣で徳川側についた九鬼水軍が使った「盲船」だという説もあります。タートル潜水艇から150年も前のことです。盲船の存在自体は、複数の文献から確認されています。ただし、絵図は残されていません。文献からすれば、喫水線を水面ギリギリにし、盾などで上部を覆った半潜水艦のようなものだったようです。そういう意味では、ハンリー潜水艇の先祖ではなく、USSモニターの先祖だったと言えます。(ハンプトン・ローズ海戦 左がUSSモニター 写真出典:fineartamerica.com)

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