2020年11月22日日曜日

ダンバー数

数年前のデータですが、ギャラップ社が、アメリカの若者に、友人は何人いるか、という調査をしたところ、平均は250人だったそうです。結構多いな、と思いましたが、その多くはSNSだけの付き合いだそうです。友人の定義もはっきりしませんが、SNS上だけでの付き合いを友人と呼ぶ感性もよく分かりません。若い人たちは、いいね!をもらえば、それが社会とつながっているという認識になるようです。

ロビン・ダンバー
英国の人類学者ロビン・ダンバーが、1990年代に提唱した「ダンバー数」は、霊長類が、互いを認知し、安定的な集団を維持できる個体数の上限をさします。おおむね100~250であり、人間に限って言えば、150程度だと言われます。ダンバー数は、大脳の新皮質の許容量と相関的な関係にあるとのこと。新皮質は、大脳の表層にあり、言語機能、合理的思考、分析的思考をつかさどっているようです。人間のダンバー数の実例としては、狩猟採取時代の氏族、新石器時代の村落、クリスマス・カードの数、アーミッシュが村落を分ける基準、そして軍隊の戦術単位等々があげられます。

軍隊の編成において、戦術単位の基本となる組織は、独自に戦術を運用できるCompany(中隊)と言えます。それは古代ローマ軍の背骨と言われたケントゥリアの時代から変わっていません。ケントゥリアは、いわゆる百人隊ですが、実際の人員数は。80~150人程度だったようです。戦場で指揮官の声が届く範囲ということだそうです。150人程度という中隊規模は長く維持されてきました。現在の米軍歩兵中隊の定員は200人。戦闘も情報伝達手段も変わった現在でもその規模が踏襲されているわけです。

企業活動等においてもダンバー数は活用されています。ゴアテックスで有名なWLゴア&アソシエイツ社やスウェーデン税務局の例が有名です。ゴア&アソシエイツ社の場合、一つの社屋の人員が150人を超えると、何らかの社会的問題が生じるという経験則があったと言います。ダンバー数を意識せずとも、150~200人程度が、執行権限を持つ組織のごく一般的な上限だと思えます。経験値による管理スパンの限界です。逆に、それを超える組織にあっては、強制力のある統制システムがなければ、組織を維持することは難しいとも言えます。

経営者が、組織編制において、ダンバー数にこだわる必要性などありません。機能優先で考えるべきであり、機動性を確保する権限移譲といった手法もあれば、コミュニケーションを維持する様々な手法もあります。とは言え、一つの組織が安定的であり、チームスピリットを発揮しやすい自然数の上限が150人程度だと覚えておくことは意味があると思います。(写真出典:aichetron.com)

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