スターウォーズの魅力は、革新的なキャラクター、宇宙船や武器、スピード感、音楽、音響等々、数え上げたらキリがありません。なかでも衝撃的だったのはウェザリングです。風化や汚れを施す処理です。スターウォーズ以前のSF映画に登場する宇宙船や武器は、真っ白いものが主流でした。ウェザリングは、リアルさを別次元へと高めました。しかしながら、スターウォーズ最大の魅力、かつ永年支持されてきた理由は、そのストーリーにあります。ジョーゼフ・キャンベルの比較神話学をベースに、人間の二面性、父と子の確執、といった普遍的テーマが描かれています。
ジョーゼフ・キャンベルの「千の顔を持つ英雄」(1949) は、世界中の神話を比較研究し、そこに共通する構成を明らかにした名著です。神話の基本的な構成は、1) 天命が下る、2) 従者と旅に出る、3) 別世界へと入る、4) 指導者・協力者と出会う、5) 悪と出会う、6) 戦いのなかで成長する、7) 戦いを征する、8) 帰還してリーダーになる、というものです。スターウォーズのみならず、ロード・オブ・ザ・リングスにも大きな影響を与えたとされます。神話ではありませんが、桃太郎の話も、よく似た構図だと思います。恐らく、男の人生が持つ普遍性を表しているのではないか、と考えます。
フォースの持つライト・サイドとダーク・サイドという設定も、人間の持つ二面性の直接的な比喩になっていると思います。不安や怒りがアナキン・スカイウォーカーをダークサイドに落とします。人間は、いつでもダース・ベイダーになる要素を持っているわけです。また、共和制と帝政という構図も普遍的なものです。共和制の機能不全をついて帝政復活を実現したパルパティーン(ダース・シディアス)など、古代から現代まで実例に事欠きません。非効率な民主制に対する独裁の効率の良さは、極めて今日的なテーマでもあります。
2012年、ルーカスフィルムはディズニー傘下に入り、スターウォーズのエピソードⅦ~Ⅸが制作されました。活劇としての面白さは十分以上であり、オールド・ファンへのくすぐりもありましたが、スターウォーズが持つサーガとしての奥深さは影を潜めました。世界中のファンが嘆きましたが、スターウォーズの42年間を今日的に全うするためには、必要なことだったようにも思えます。May The Force Be With You. (写真出典:angly-space-triangle.com )