2020年11月14日土曜日

北京の箪笥

かつての北京友誼商店
四半世紀も前のことですが、初めて訪れる北京で、楽しみにしていたことは3つ。故宮見物、前門劇場での京劇鑑賞、そして中国風の木製椅子の購入でした。アンティーク・マーケットのようなところに、多くの椅子があり、そこで買えると思ったのですが、どうもイメージにピッタリの椅子がありません。椅子は半ばあきらめて、友誼商店へ茅台酒を買いに行きました。今は4~5万円もする高級酒ですが、当時は2~3千円で買えたと記憶します。茅台酒を買って、帰ろうと階段を降りたところ、階段下に処分品のような家具がありました。残念ながら、椅子は無かったものの、気になるチェストがありました。

腰ほどの高さで、黒い漆に玉で婦人を3人あしらったものでした。我が家の妻と2人の娘かと思い、気に入りました。値段を見ると日本円で約1万円。もちろん安物家具でしょうが、随分お得なので、椅子の替わりに買うことにしました。日本へ船便で送る手続きをすると、輸送経費は1万5千円。送料の方が高いのは馬鹿げているとも思いましたが、当時の中国の遠さを考えれば止む無しと思い、輸送を依頼しました。2~3か月かかると言われましたが、意外と早く、ひと月半ほどで届きました。

横浜の輸入代行会社から電話があり、荷物が届いているとのこと。自宅まで届けてもらうことにして、通関手続き等の手数料と送料の合計を聞いて驚きました。8万円だと言うのです。既に2万5千円支払っているとは言え、安物のチェストに、さらに8万円など冗談じゃありません。馬鹿らしいから捨ててくれ、と言って電話を切りました。ただ、思いついたことがあり、すぐに業者に電話しました。諸手続きと輸送を自分でやるとすれば、いくらだ、と聞きました。それなら料金は一切発生しません、とのこと。

早めに来れば、倉庫の保管料も発生しないと言われ、早速、横浜へ出かけました。代行業者の事務所で必要書類を受け取り、横浜税関へ行きました。そこで簡単な書類を一枚記入し、税額の査定を待ちます。関税が高ければ、あきらめようと覚悟していました。ところが、びっくり。関税は、100円でした。元が安いので当然なのでしょう。受け取った書類を持って、保税倉庫へ向かいます。さほど待たされることもなくチェストが出てきました。当時、車がステーション・ワゴンだったので、ギリギリ積み込むことができました。

もし100万円の荷物を送ったのであれば、8万円と聞いても、やむなく支払ったと思います。素人が、通関手続きや保税倉庫と聞けば、よろしくお願いします、ということになります。そいう意味では、輸入に限らず、代行業者の存在は、実にありがたいものであります。ただ、その代行してもらう手続きの内容は確認すべきです。そして代行してもらうに値するかどうかを、しっかり判断すべきだと思います。(写真出典:kknews.cc)

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