2020年10月28日水曜日

モンティ・ホール問題

モンティ・ホールは、アメリカのTVの人気ゲームショー「Let's Make a Deal」の司会を永年やった有名人です。1990年、このゲームショーがもとで、数学界を巻き込む大論争が勃発します。いわゆる「モンティ・ホール問題」です。きっかけは、雑誌「Parade」の人気コラム「Ask Marilyn」への投書。Marilynとは、マリリン・ヴォス・サヴァント。著名なコラムニスト、作家ですが、なによりもギネスが認定した世界一知能指数の高い人として有名でした。IQ値は228。アインシュタインですら、推定160~190です。

投稿のもとになったのは、新車を当てるゲームです。3枚のドアがあり、1枚には新車、残り2枚にはハズレの意味でヤギが隠されています。新車のドアを選択すれば、新車がもらえます。挑戦者は、まず1枚のドアを選びます。その時点で司会のモンティ・ホールが、残り2枚のうち、ヤギのいるドアを1枚開けます。ここで、挑戦者は、最初の選択を変える権利が与えられます。投稿者がマリリンに質問したのは、挑戦者は選択を変えるべきか、変えないべきか、というものでした。マリリンの答えは、ずばり「変えるべき。その方が新車が当たる確率が倍になるから」というものでした。

直観的に言えば、マリリンの答えには違和感があります。開いていない2枚のドアには、新車かヤギがいるわけで、確率は半々となります。この答えが問題となり、ついには数学界の大御所たちも参戦して、マリリンの答えは間違いだと大騒ぎになります。最終的には、コンピューターを使った分析までが行われ、マリリンが正しかったことが証明されます。数学的には前提が不十分だったり、統計上の事後確率の問題であったりとか、難しい話もあります。また、数式を使った説明も多いのですが、実は、とても単純な話のように思えます。

数学者も含め、多くの人たちは、どっちのドアに新車があるのか、という問題だと勘違いしたのではないかと思います。それなら確率は、半々に決まっています。ところが、そもそもの問題は、最初の選択を変えるべきか否か、ということです。最初の選択で新車が当たっている確率は1/3です。一方、ハズレの確率は2/3です。モンティ・ホールがヤギのドアを開けようが、開けまいが、これは変わりません。2回目の選択での確率は半々で決まっていますから、1回目の選択を変えた方が当たる確率は倍になるわけです。図に描いてみれば分かりやすいと思います。

アメリカ人は、IQ好き。多くの有名人がIQを公開しています。IQはエンジンの回転数に例えると分かりやすいと思います。エンジンの馬力は、”回転数Xトルク(軸を回す力)”で求められます。IQ=回転数が高くても、トルクがゼロであれば、馬力はゼロです。IQの高い人が、仕事や学業で結果を残せるとは限らないわけです。ただ、近年、IQの測定は、判定法によるブレも大きく、あまり意味はないと言われます。マリリン自身も測定は無意味だと発言、ギネスもIQ世界一の記録を抹消しています。(マリリン・ヴォス・サヴァント 写真出典:discogs.com)

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