NYで仕事をしていた時のことですが、提携する大手保険会社の人事部長からランチに誘われました。業務上、直接関わりがないバック・オフィスの人たちと会うことは、ほぼ皆無だったので、意外なお誘いでした。私が、若いころ、人事部に所属していたことを聞きつけ、興味を持ったようです。彼は「日本の成功の要因は何か?」と聞きます。時は1980年代末、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代でした。
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ノーベル賞メダル |
言われてみみれば、確かに米国で統計的平均、アベレージと言う言葉は、ほとんど聞きません。日本人は、平均が大好きですが、米国人はトップとかベスト等がお気に入り。民族的にも文化的にも均一性の高い国と、歴史も浅く、他民族国家であり、何かと格差の大きい国との違いなのでしょう。もちろん日本にも格差は存在します。例えば経済的格差は、近年、拡大傾向にあります。それでも、欧米に比べれば、まだ小幅です。山がちで狭い国土、無常観に基づく文化、教育水準、あるいは社会主義的な体制等々も均一性を高めているのでしょう。
さらに、歴史的に見れば、世襲的な身分制度としての奴隷制の有無も大きな要因だと思われます。日本にも奴隷は存在し、人身売買も行われてきました。小作農も農奴に近いとも言えます。ただ、日本における奴隷は、身分制度として確立せず、日本の社会は一定程度の流動性が確保されていたと考えます。それは島国で、均一性の高い民族構成ゆえかもしれません。例えば、古代ローマの奴隷の供給源は敗戦国であり、パクス・ロマーナの時代になると供給は細り、人身売買や農奴制が生まれています。武力制圧した他国や他民族でなければ、奴隷化しにくかったということなのでしょう。
知識偏重、詰め込み型だった日本の教育は、その反省から90年代には「ゆとり教育」導入、それによる学力低下が問題となり、2010年代からは「脱ゆとり」の時代に入っています。ノーベル賞受賞者数は、依然として米国が圧倒的多数。ただ、2000年以降、日本は、米国、英国に次ぐ多数の受賞者を出しています。ま、教育行政と研究環境は関連する部分もありますが、別の問題だと思いますが。(写真出典:share.america.gov)