2020年9月5日土曜日

スガキヤ・スーちゃん

全国を対象とした投票型のラーメン・ランキングは意味がありません。ラーメンは、店舗での実食が基本ですから、人口密集地の人気店が必ず上位にくることになります。十数年前、それでもネット投票が行われたこともあります。その時の結果が衝撃的でした。第一位は、名古屋・東海地区に展開するスガキヤでした。名古屋に赴任する前でしたので、スガキヤは未知の存在であり、大いに驚きました。ランキング結果は、大規模にチェーン展開しているからこその結果です。ただ、名古屋に行って分かったことですが、単に規模の問題だけでもなかったのです。

名古屋に赴任して早々に、気になっていたスガキヤへラーメンを食べにいきました。安い、小ぶり、豚骨と魚介のWスープ。はっきり言って美味しものではありませんでした。ただ、店は、中学生や高校生で大混雑。フードコートへの出店の多いスガキヤは、中高生の放課後のたまり場だったのです。名古屋の人に聞けば、特に女子は、皆、放課後にスガキヤで長時間おしゃべりするのが定番だったと言います。言ってみれば、スガキヤのマスコット、スガキヤ・スーちゃんで店は満杯だったわけです。

これがスガキヤのビジネス・モデルだと思い、スガキヤの本社を訪問した際、話してみました。ところが、スガキヤが言うには、メインの顧客層は、30歳代の主婦とのこと。なるほど、スーパーに買い物に来た主婦たちが食べているということです。しかし、考えてみると、彼女たちこそ、中高生の頃、毎日のようにスガキヤに陣取り、おしゃべりしていた連中です。舌がスガキヤになっているわけです。スガキヤの超長期戦略です。

かつてスガキヤは首都圏にも進出していました。今は、完全に撤退。味の好みの問題かと思いきや、儲かってはいたが利益率が10%以下だったので撤退したというのです。スガキヤが言うには、人口が多すぎると顧客の選択肢も増え、利益率が下がるようです。それにしても出退店の基準が利益率10%とは、なかなかの強気。スガキヤの強さを見た思いがしました。

2008年、スガキヤ自慢のラーメン・フォークが、ニューヨーク近代美術館のグッド・デザイン・グッズに認定され、MoMAショップで販売開始されました。ラーメン・フォークは、環境保全に配慮して、割りばしから置き換えるために、ノリタケと共同開発されました。フォークとスプーンを合体させたもので、先割れスプーンの進化系と言えます。使い勝手のいいものではありません。MoMAショップで、値付けを問われたスガキヤは、店舗での販売価格400円ほどを提案します。MoMA側から、うちには10ドル以下の商品はないといわれ、12ドルにしたと言います。販売開始に際し、2,000本を持ち込みましたが、なんと2日で完売したそうです。
写真出典:zazacity.jp

マクア渓谷