"Take me to the river" は、メンフィスの黄金時代を支えたミュージシャンたちの今を追ったドキュメンタリー。生き残っていた連中を集め、若い連中とのレコーディングにこぎつけるまで過程と、過去の映像の組み合わせが、たまらない絶品です。メンフィス・サウンドの継承が一つのテーマになっています。ヒューバート・サムリン、ブッカーT、スキップ・ピッツ、ボビー・ブランド、メイヴィス・ステイプル等々伝説のミュージシャンが登場する2014年の映画です。巨人たちとスタックスの音楽教室に通う少年たちとのセッションもありました。少年の一人が「彼らはブルースの息子でロックの父親だ」と言います。名言です。一言でメンフィスの音楽をも語っています。

もともと陽の当たらないブルース界ですが、50~60年代、世界を席捲した英国のロック・スターたちがリスペクトしていたことで、彼らは表舞台に登場します。ただ、ハウリン・ウルフ、マディ・ウォータースが死ぬと、ブルースも下火になり、彼らは失業します。サイドマンの宿命かもしれませんが、永らく極貧の生活を送ります。再び注目されたのは、ダンス音楽の嵐が去った90年代後半のこと。皆、既に老境に入っていました。奇しくも3人は、2011年に相次いで逝去しています。ミシシッピ・デルタから腕一本で抜け出した3人でもありました。
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