逆に地盤の弱い土地は、地名で分かるという話を、名古屋大の地震学の権威から聞きました。例えば沼とつく地名は、明らかに沼沢地だったわけです。また、田とつけば、田んぼを埋め立てた土地だと見当がつきます。長らく田んぼだった土地は、いつまでも水が上がってくるとも聞きます。津は港のことです。小型の木造船が主体の時代、多くは砂地の浜だったと想定されます。いずれも、地盤の弱い土地だと言えます。日本で一番地盤の弱そうな地名はどこか分かりますか、と聞かれ、即座に津田沼と答えました。正解でした。
谷とつく地名も、災害に弱そうな気がします。水害や崖崩れのリスクが高かそうです。かつて渋谷の街は、雨が降ると水があふれていました。最近は、地下に巨大な貯水施設が作られ、これがうまく機能しているようです。江戸は、東側は墨田川一帯や墨東の湿原、北や西側は台地のヘリに築かれた町なので、坂も多く、谷も多い街です。浮世絵を見ると、江戸の地形がよく分かります。お気に入りは、北斎が描く九段坂。なかなか厳しい坂であることがよく分かります。広重の江戸百景を見ると、多くは湿原を思わせる光景です。概ね、皇居の東は地盤の悪い土地柄と言えます。

歌川広重名所江戸百景「深川洲崎十万坪」 写真出典:adachi-hanga.com