加島屋の瓶詰のさけ茶漬は、デパ地下グルメの定番。安政2年創業の加島屋は、新潟市の古町に本店があります。鮭、鱒、鱈等の塩蔵品や塩干物から始め、扱い品目を増やしていきました。ちょうど60年前、四代目の加島長作氏は、母親がまかないに作ってくれたさけ茶漬を商品化、大ヒットさせます。当初、北海道産のキングサーモンを使っていましたが、より良い天然の鮭を求め、アラスカのユーコン・リバーにたどり着きます。
養殖サーモンの出荷量世界一はノルウェー。商社を通じて発注すれば、サーモンの色合まで指定でき、楽に入荷できるそうです。ただ、長作氏は、天然のキングサーモンにこだわり続けます。「いい鮭さえあれば、おいしいさけ茶漬が作れます」とは長作氏の弁。長作氏は、毎年、自らユーコン・リバーに出かけ、永い付合いとなったエスキモーの家族と一緒にキングサーモンを獲り続けます。加島屋が一年間に使う量以上は、決して獲らなかったと言います。
加島屋で買い物すると、しっかりとした紙袋に入れてくれます。白と濃紺のすっきりとしたデザインは、遠目にも加島屋の袋とすぐ分かります。紙袋がしっかりしているのは、瓶詰が重いからという理由だけではありません。しっかりとした紙袋は、様々に使いまわしがきき、実に便利です。袋だけがメルカリで取引されるくらいです。これこそ長作氏のねらい。皆が、加島屋の紙袋を使いまわせば、いい宣伝になります。加島屋は、広告宣伝費を一切使わず、紙袋のコストを吸収しています。
加島屋は、さけ茶漬だけではなく、多様な食品を扱っています。なかでも切り身の粕漬や味噌漬は絶品です。それを上手に焼いて、美味しいコシヒカリとともに食べさせてくれるのが、本店2階の長作茶屋。加島屋の商品を実食できる大人気店です。東京から訪問客があった際、よく昼食に連れていきました。皆、大喜びでした。ただ、一切、予約を取らないので、タイミング如何では随分と待たされます。
長作氏に、これだけ人気なのだから、店を拡張し、予約も取ってください、とお願いしたことがあります。長作氏は、ニコニコと笑いながら「やりませんよ。私は、ただのおかずやですから」とおっしゃっていました。筋を通す、という長作氏の姿勢に、あらためてさけ茶漬の美味しさを思い起こしました。(写真出典:tobu-dept.com)