
つまり、完璧と思われた米国のチェック&バランス・システムは、まっとうな政治家によるまっとうな政治を前提に構成されており、政治経験もなく自己顕示欲ばかりが強いTVタレントによる売名目的の行為を想定していなかった、ということになります。あたかも国政が乗っ取られた印象です。共和党も乗っ取られました。もはやアメリカに二大政党制は存在しません。とは言え、先人たちを、制度設計が甘かったと責めることはできないでしょう。
トランプが、反エスタブリッシュメントの新たな政治体制を作るというのなら、まだ分かります。ただ、そんな気も、そんな動きもありません。ひたすらイメージづくりと支持者からの人気取りにまい進する姿は、視聴率獲得をねらうタレントそのもの。そして実に巧みだと言わざるを得ません。敵・味方の作り方、公私の不明確なSNSの使い方、人事のメリハリ、グッズの使い方等々、感覚的にせよTV界で鍛えた技が光ります。
数年前、「近い将来、日本に独裁は生まれるか?」というジョークがはやりました。答えはNO。なぜなら、既に独裁化しているから、という落ちです。日米のトップに、まっとうな政治家が就くことを祈るばかりです。
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