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監督については情報が十分ではありません。長編ドキュメンタリーは初挑戦のようですが、数年前、ル・コルビジェに関する中編ドキュメンタリーを撮っています。それが認められて、本作を任されたのでしょう。美術に関する造詣の深さは分かります。ただ、エル・グレコ、ベラスケス、ゴヤをはじめ、一人でも相当の長編にならざるを得ないほどの巨匠たちが目白押しのプラドゆえ、個々の深堀は困難です。だとすれば、一つのストーリーのなかに、それぞれを埋め込んでいくしかありません。コンセプトを絞りに絞り、よほど角度のついた脚本を準備しなければ、散漫なだけの作品になります。ドキュメンタリーとは、思想のプレゼンだとも言えます。それが無ければ、ただの映像のラッシュに過ぎません。
とは言え、かつて訪れたプラドは懐かしく、好きな画家の好きな作品が出てくる映画は、それだけで楽しいわけです。プラドへ行ったのは40年前。ツアーだったので、プラドでの自由時間も限られたものでした。ベラスケスの「ラス・メニーナス」を見るためにスペインへ行ったとも言えるので、そこでたっぷり時間を取りました。結果、二番目の目的であるゴヤは、点数も多いので、ほとんど駆け足で見るしかありませんでした。それでもゴヤの画質の艶やかさには圧倒されました。写真と実物の違いは、ラス・メニーナスでもゴヤでも痛感させられました。特にゴヤは、現物以外で、その凄みはまったく伝わりません。いずれにしても、もう一度、ゆっくり数日をかけてプラドを楽しんでみたいと思いました。
写真出典:yahoo.co.jp