
ルトワックによれば、武経七書は漢民族同士の戦いのなかで生まれており、敵も同じように考えるということが大前提になっていると言います。例えば、戦わずして勝つとは、敵が兵力・時勢等において自軍が劣ると考えれば、戦う前に平伏するはずだという前提に立っているわけです。よって、漢民族は、自軍の戦闘能力を高めるよりも、自軍を誇示することを優先する傾向があると言っています。
当然、異なる考え方を持つ敵に対しては、まったく通用しない場合が出てきます。歴史的に見て、漢民族の対外戦争の戦績は、決して芳しいものではありません。モンゴル族、満州族、英国、日本、ヴェトナム等には敗れ、朝鮮半島では米軍と引き分けています。現在の人民解放軍が弱いというのではありません。兵員数、物量、核兵器等、強大な軍事力を有しています。初戦を落とす確率が高いというのは、スタンスの問題です。いずれにせよ、自軍を誇示するという漢民族のDNAは、そこここでややこしい話を生み続けています。当然、それは偶発的な火花の発生確率を高めることにもなります。
孫子 出典:xtrend.nikkei .com